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崩山坑古道泰平側、初めは沢沿いに進む |
先週雙溪の辞職嶺古道などを経て、虎豹潭へと歩いた。今回は、虎豹潭から歩き始め、崩山坑古道を経て、柑腳へと歩いた。雙溪の古道の魅力を探るため、この第二回目の古道歩きとなった。山深い雙溪泰平村には山の中に点在する集落を結び、また外地との往来のため、数多くの山道がある。産業道路の開通も比較的遅く、かなり最近まで往来されていた道もある。今回の崩山坑古道は、柑腳と泰平を結ぶので柑泰古道とも言われる。柑腳は、石炭を産出する炭鉱の街として栄えた。平渓の炭鉱と同様、鉱業は廃れ、今はひなびた田舎になっている。山の中の泰平村の住人は、その当時は買い物をしたり、さらにそこを経由して外地に赴くため、この崩山坑古道を往来したという。
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崩山坑古道柑腳側棚田跡、背後は柑腳山 |
古道は、両地点を最短距離且つ最も少ない労力で行くように開かれている。山頂を乗り越えていくようなことは、あまりない。崩山坑古道も、柑腳山と東柑腳山の間の鞍部を越えて行く。この鞍部は風空と呼ばれている。泰平の料角坑から歩き始め、風空鞍部から古道を離れて山道を辿り、柑腳山頂上へ立ち寄った。頂上からは、別の山道を経てまた古道に戻り、谷沿いに崩山坑産業道路に下り、郷道を経て柑腳へと歩いた。
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南の虎豹潭から北へ柑腳山を越えて歩く |
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F811バス虎豹潭バス停 |
今回の山行は、Wさんが同行する。先週と同じに、南港駅6:45発の区間電車で雙溪に向かう。休日の今日は行楽客が中心だが、瑞芳で大部分が下車するのは同じだ。ただ目的地は学校ではなく、遊楽地である。雙溪駅には、数分遅れで到着。すぐに接続する7:45発国光701番バスに乗るつもりだったが、すでに発車したあとだ。本来の予定は、柑腳から泰平へ歩くつもりであったが、次の701番バスで行くと、虎豹潭で帰りのF811バスに乗るには、時間的に厳しくなるおそれがある。そこで、急遽方向を換えることにした。柑腳はバスの便が多い。F811の社区バスは8:35にやって来た。我々以外に数名の遊楽客も乗車した。
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右上が泰平分校 |
9時10分過ぎに虎豹潭に到着する。我々二人以外に、若い女性二人連れも下車した。崩山坑古道入口に行く前に、虎豹潭の岸辺で写真を撮る。天候は曇っているが、雨は大丈夫そうだ。雙泰產道を進む。数分歩くと、右の丘の上に小学校泰平分校がある。辭職嶺古道の名付け由来の学校の先生が、本来赴任する予定だった学校である。自動車がまだ通っていない頃、雙溪の街からここまで歩いてくるのは、確かにかなりの苦労だ。警察駐在所のわきを行く。その先、田畑が広がり石積みの農家がある。実にのどかな風景だ。
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産業道路からみる畑と農家 |
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崩山坑古道入口、右の小道が古道 |
産業道路を歩くこと約10分、料角坑の分岐にやって来た。少し高いところにある雑貨屋さんの前を過ぎる。番犬が吠える。犬をなだめる店の前のおばあさんに挨拶すると、そっちに行くのか尋ねられた。山登りをすると答える。分岐を更に進むと、池のわきを通り料角坑橋に来る。右に折れて登る。野薑花がたくさん咲いている。料角坑5号の民家を過ぎる。振り返れば、開けたこの場所から横山の山並みが見える。いずれは、この山を越えて海側へ大渓へ下りる道を歩くつもりだ。その先少しの電柱に、藍天隊の崩山坑古道入口の道標が取り付けられている。
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せせらぎ沿いに歩く |
分岐から少し進むと、土の道になるが網があり塞がれている。手持ちの蕭郎の地図では、歩いてきた舗装路を、更に進んでその先の民家からも、古道につながっている。そこで、舗装路を登ってみる。道は急な坂を峠で越え、下ると民家がある。民家は網が幾重にも囲んでいる。鶏など動物が外に出たり、犬などが入ってくるのを防ぐためだろう。探してみるが、民家から先の道がない。そこで、いま来た道を戻り分岐に戻ってみる。網に近づいてよく見ると、道の部分の網はドアのように開くことができる。先ほど近づいてよく見るべきだったようだ。往復20分ほどのロスになったが、古道が確認できてホッとする。
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石積みの橋をわたる |
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広くてとてもよい状態の道が続く |
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風空峠部、古道は右の切り通しを進む |
石段を下り、草むらを通り過ぎる。沢沿いに進むようになる。せせらぎ沿いの道は、とてもいい雰囲気だ。古道入口から10分ほど来ると、橋を越える。橋は石を積み上げてできた、とても珍しいものだ。この古道が以前は重要な道であったことが判る。道は沢を離れ、尾根に取り付いて登り始める。しばらくすると、先ほど歩いてどんつまりであった民家が、木々の奥に見える。この距離だったら、草をかき分けてもこれるが、その時はこんなところに古道があるのはわからなった。更に進むと、坂道が急になる。10時48分、峠の風空についた。古道はそのまま切り通しを過ぎて下っていく。ここは、保成坑古道と、山腹を行く山道との分岐でもある。歩き始めて1時間半ほどになるので、休憩する。
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折れた杉の枝をやり過ごす |
柑腳山へ登るため、崩山坑古道を離れ山腹をいく道に入る。歩いてきた古道と比べると、草が深く踏跡もあまりはっきりしない。台風の強風などで折られた枝が道を塞ぐ。幅の狭い道に大きな枝ごと折れているので、苦労してやり過ごす。10分ほど歩くと、そのまま山腹を行く道と、柑腳山頂上へ行く道が分岐する。右にとり、登っていく。道自体は比較的緩やかだが、道筋はあまりはっきりしない。小さい登り下りを更に10分ほど歩くと、右から稜線を登って来る道と合流する。柑腳山の頂上は、もうすぐだ。木々がまばらで、遠景が望める。遠くの山には、丸い白いドームが載っている。平渓の
五分山だ。一度下って登り返すと、標高615mの頂上についた。時刻は11時30分、虎豹潭から2時間10分ぐらいだ。
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柑腳山山頂 |
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草深い山道、踏跡が見えない |
頂上の周囲は樹木が生えているので、展望は殆どない。山頂には基石が二つ、ひとつは二等三角点だ。もう一つは雙溪水源と記してある。しばらく休憩した後、下り始める。登ってきた尾根上の道を、分岐まで戻る。そこで左にとり、そのまま尾根上の道を下る。急な下りが終わると、大きな枝が道を塞いでいる。大回りをしてやり過ごす。頂上から15分ぐらいで、左にそのまま尾根を柑腳城山へと下る道が分かれる。右に崩山坑古道に下る道も草に埋もれているが、稜線道も見たところ五十歩百歩だ。古道の泰平村側はとても道の状態が良かったのに比べると、落差が大きい。人気のないルートということだ。標識リボンがあるので助かる。更に15分ぐらいで、崩山坑古道の分岐に着く。12時を少し回ったところだ。ちょうど、二人の登山者と出会う。彼らは新北市古道探勘協会のメンバーで、古道の探索で柑腳側から登ってきたそうだ。途中には、自分たちのリボンを残してきたと話している。
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古道にある木の柵 |
同じ崩山坑古道だが、こちら側は草が深く泰平側とは差が大きい。どうしてこれだけの差があるのか不思議だ。幅員はそれほど変わらないが、草が深く踏跡だけが続く。それも草に覆われているところも多い。切り通しでは、水が流れ小沢状のところも過ぎる。牛などのためだろう、木製の柵が設けられている。石が敷かれているところも現れ、重要な山道であったことを示している。分岐から20数分下ってくる。右に大埤古道が分かれていく。道は谷底を下るようになり、左側の沢が音をたて流れている。大埤古道分岐から10分ほど下ると、有應公の祠がある。苔に覆われた石の祠には、香炉が置かれているが中には神像がない。ほとんど地元の人が歩くことのない、この道の土地公には、もうお参りする人もいないのだろう。
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古道の柑腳側は草深い |
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有應公の石の祠が右に見える |
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苔の生えた石段が続く |
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石垣のわきを下る |
沢沿いの道は、石段が沢山置かれているが、苔がはえて滑りやすい。右に大きな石垣が残されている。ジメジメしているが、ここには何かの施設があったのだろう。下るに連れて、左側の沢は水量が増していく。古道を下ること1時間40分、棚田のあとが現れる。草が生えているが、樹木もなく以前は田んぼであったことが判る。少し休憩する。コンクリ製の橋で枝沢を越える。更にその先には、かなり広い棚田跡が現れた。谷あいのここからは、振り返ると超えてきた山が見える。空も晴れてきて、緑の草原に映え、微風が吹いて心地よい
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透き通った水が流れる沢沿いに下る |
水が流れている部分を越え、まもなく古道の入口に着く。ここからは舗装された産業道路を下る。橋を越えてしばらくすると、左に周囲に瓶をたくさん地面に埋めた家屋がある。表示がないので、判らないが酢の工場なのか。ただ、何も臭わないので、瓶は単に装飾として埋めているだけなのかもしれない。古道入口から10分足らずで、北42郷道の分岐にやってくる。ここから右に折れて柑腳へ向かう。歩いてまもなく、後ろから車がやって来た。通り過ぎて行く車を見ると、F812社区バスだ。北42郷道の奥にある盤山から折り返してくる便で、すでに間にあわないと思っていたので、注意していなかった。通りすぎて行くバスは、こちらの合図には気づかず行ってしまった。郷道を進み、橋を渡って14時12分、柑腳に辿り着いた。振り返ると渡った橋の向こうには、柑腳城山が望める。
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柑腳の分岐から振返る、向こうに柑腳城山が見える |
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701番バスがやって来た |
次の雙溪駅行き国光701番バスは、15時半頃に来る予定だ。1時間以上も時間がある。道を少し行くと、左に雑貨屋がある。ビールを飲みながら、店の前で待つことにする。待つ間、近々結婚する若い女性が村人に喜餅(結婚する前に配るお祝いのお菓子)配っていく、地元の子供達が買い物にやってきて話をしたり、村の世話役の人がきて店のおばあさんと世間話をするなど、普段の都会生活とは異次元の時間をゆっくりとすごした。予定通り701番バスがやって来た。乗客は、我々二人だけだった。
歩行距離11km、柑腳での待ち時間を含まない、休憩込み行動時間は5時間5分である。累計の登り高度は約500mである。泰平側のほうが高度が高いので、登りはそれほどなかった。本来の予定とは、逆方向に歩いたわけだが、結果としてこちらのほうが良かったと思う。雙溪の古道歩きは、これで二回目になる。雙溪の泰平には、まだまだ多くの古道がある。引き続き別の古道も歩いていくつもりだ。
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