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姜子寮山(中央尖から、2012年3月撮影)、麓は平渓の集落 |
昔歩かれていた道が、交通の発展で忘れさられ自然に帰っていくことは、各地にある。そうした道の中の幾つかは、登山者がその跡を歩き、再び道として生き返っている。今回歩いた姜子寮古道は、汐止の姜子寮と平渓を峠を越して行く道であるが、汐平公路が開通すると、忘れさられ草に埋もれた。最近、この道が登山者に歩き始められている。ただし、かなりの長期に渡って放置されたようで、石段やその他の様子はまだまだ自然に近い状態だ。
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西の姜子寮から稜線へ、そして南の嶺腳へ山越え |
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平渓側のほうが高度が高い |
今回は汐止駅から出発、新北市F905番無料コミュニティバスで姜子寮路の入口へ向かう。先に姜子寮古道を経て、今は汐平公路の峠部分となっている
磐石嶺から
姜子寮山へ続く分水嶺主稜線に登り、稜線上の道を姜子寮山へ、更に
中窯尖へと縦走した。中窯尖からは南に支稜を下り、滴水觀音で知られる靈巖禪寺へと下った。その後、靈巖禪寺第二步道から台車道へ下り、そのまま嶺腳駅へと歩いた。嶺腳からは795番バスで木柵へ戻ることもできるが、汽車がすぐやって来るので、鉄道で台北へ帰った。
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姜子寮山、中窯尖の登山軌跡 |
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出発点の姜子寮路口バス停 |
10月も中旬に入り、秋の気配がだいぶ濃くなってきた。今回は、WさんとHさんが同行、都合三名パーティでの行動だ。汐止駅を7時5分発のF905バスで出発。このバスは汐平公路を峠を越えて平渓まで往復している。幾つかの便は、途中で分岐し姜子寮へ往復するが、7時5分発のバスは立ち寄らないので、姜子寮路入口バス停で下車する。15分で着いた。もともとこの道は民間バスが走っていたが、採算上の理由で今はない。社区バス停のすぐわきに石門橋という、民間バス停留所の鉄管標識がまだ残っている。
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福興宮、なぜソファが置いてあるかは不明 |
バス停車場所は、姜子寮路入口から少し先に行ったところなので、戻って右に折れ姜子寮路を進む。少し下って橋を渡り、登りが始まる。沢沿いの道は土地公のわきを過ぎると、道幅が広く拡張されている。20分間で約2kmほど歩き、福興宮のある姜子寮路の終點部分に来る。ここは、これから歩く姜子寮古道以外に、旗尾崙を経て姜子寮山へと続く山道、姜子寮絶壁への道へと分岐する。姜子寮古道へは、右に橋を渡り、たもとにある小吃店から沢わきに降り、防砂堤防に向かって沢沿いに歩く。歩いてまもなく右側に標識リボンがかかっている、小道の入口がある。ここが古道の入口だ。
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天峰谷渡假村のパオ、バンガローとして使われているようだ |
道は、すぐにジグザグに山腹を登り始める。緑に苔むした石段が現れる。古道の様子だ。10分ほどで、天峰谷キャンピング村の下部に着く。舗装路にそって、登っていく。石積廃屋やモンゴルのパオが並んでいる場所を過ぎる。二、三十名の若者たちの活動が進行中だ。パオを過ぎると、キャンピング村の汐平公路側の入口になる。姜子寮古道は、この入口のずっと左側だ。沢の古道入口からキャンピング村までは、そこそこ歩かれているようだが、この上の部分はずっと自然に近い状態である。おそらく、これから上の部分が最近歩かれるようになった部分だろう。
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姜子寮古道、石の板が小沢の橋となっている |
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汐平公路への分岐部、道標が新しい |
草深い道を登っていく。苔の石段が続く。小沢を石の橋で渡る。まさに古道たる様子だ。以前は棚田であったと思われる石垣もある。キャンピング村から約15分ほど歩く。分岐があり、右に進めば汐止公路へと続く。左には草の中に細々とした古道が続く。幹に取り付けられている藍天隊の道標は、今年5月の日付でまだ新しい。山腹を行く道は、沢をこえて行く。上の方から自動車やバイクの走る音が聞こえる。この辺りは汐平公路と並行している。その先は道幅も広くなり、古道の様子だ。ただ、草深いことには変わりがない。群生している野薑花の白い花がたくさん咲いている。雑木林の中をゆき、8時45分、すこし開けた場所で小休憩する。蛭がズボンの裾について動いている。塩をかけると、たちまち体を巻いて縮んでしまった。
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廃棄産業道路を歩く、向こうは旗尾崙の尾根 |
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稜線鞍部へ向け登る、踏跡はあまりはっきりしない |
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稜線の鞍部分岐部 |
更に5分ほど歩くと、廃棄された産業道路にでる。左にとり産業道路を進む。まもなく右に土の産業道路が分岐していく。道標はないが、これが古道へと続く道だ。正面には、旗尾崙の尾根筋が見える。途中水が流れている部分を二ヶ所越え、ほぼ平な道を進む。10分ほどで、また古道の分岐に来る。産業道路をそのまま進むと、旗尾崙からの尾根に辿り着き、そこから登山道を姜子寮山頂上へ歩くこともできる。分岐を右にとり、細い山道を登る。草の覆いかぶさる部分や、緑の苔がびっしり生えている石段などを通り過ぎて行く。石を積み上げた低い塀が現れると、峠部分はすぐだ。9時40分、稜線の分岐にたどり着く。
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正面に姜子寮山頂上の展望だが望める、ススキの穂が出始めた |
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姜子寮山頂上の三角点基石 |
稜線は右に下れば、石硿大崙を越えて磐石嶺へと続く。小休憩後、左へ尾根を登る。ほどなく、雑木林からでて草むらの道となる。幸いにそこそこ歩かれているようで、草が邪魔で藪漕ぎが必要なほどではない。陽明山山系の草原と同じで、ここは風が強く樹木が育ちにくい場所のようだ。正面には、姜子寮山頂上の展望台が見えている。ススキが穂を出し始めている。小ピークを二ヶ所ほど乗り越え、10時10分、頂上(標高729m)に着いた。今日の行程の最高地点だ。今日は曇りだが、展望は陽明山方向が霧の中であるのを除いてOKだ。石硿大崙のあたりに国旗がたなびいている。日本の山と渓谷社のWebサイトには、海外登山旅行として台北付近の代表的三山を登るコースがあるが、その三山、
基隆山、
七星山、そして
灣坑頭山はこの姜子寮山からすべて望める。もっとスッキリした天気だと、南方向に雪山山脈も望めるはずだ。しばらくすると、後ろを歩いていた多人数パーティーメンバーが頂上にやって来きて、頂上は賑やかになる。
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頂上より姜子寮古道の峠から歩いてきた草原の道を望む |
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頂上から見る北側のパノラマ |
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南側のパノラマ |
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草の中の稜線道を進む |
30分近くゆっくりと休憩したあと、稜線道を進む。北側は立派な姜子寮山歩道が下って行くが、稜線道は草深い道だ。頂上から数分歩くと、右に道が分岐する。ある登山パーティの標識リボンで道を塞いでいる。踏跡は、主稜線上のものと比べると少し細いようだ。あまり注意を払わなかったが、これが姜南山方向へ下る道の分岐だった。もともとは、姜南山方向へ下ることを予定していたが、そのまま稜線を行き中窯尖から嶺腳へ下るように変更する。この稜線もいずれは歩くつもりであった。急な下りが現れる。大石のわきを通り過ぎる。また登り返して大岩をぐるりと回っていく。主稜線道のこの部分は歩きにくいセクションだ。中窯尖への後半は、比較的上下高低差が少ないが、それでも稜線の縦走には登り下りはつきものだ。12時3分、滴水觀音からの道との分岐に着く。姜子寮山から約1時間半の歩きだ。中窯尖頂上(標高605m)は、そのほんのすぐ先だ。
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稜線道の登り返し |
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稜線道の後半はなだらかな登り下りが続く |
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中窯尖頂上、リボンがたくさん架かっている |
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枝尾根を登り返す、背後に主稜線 |
12時半に中窯尖から下りはじめる。分岐にもどり左に枝尾根を下る。下りきると右に沢沿いに道が分岐する。分岐部の標識リボンは新しいので、この道もそれほど程度が悪くないかもしれない。登り返したあと、今度は左に道が分岐する。郷林農場、望古産業道路への分岐だ。ここから、岩の露出するヤセ尾根をしばらく進む。二ヶ所補助ロープの架かる岩場が現れる。登り切ったところからは、中窯尖や主稜線が望める。だいぶ降りてきたことがわかる。ピーク上から左に道が分岐する。道標はないが、郷林農場へ続く道だ。枝尾根はここから右方向に折れて進む。頂上から約1時間ほど下ってきたところで、急な下り坂の右に大きな岩が露出している。踏跡が続いているので登ると、絶好の展望台だ。姜子寮山から中窯尖への稜線、姜子寮山より姜南山を経て下っていく枝尾根などが、深い谷を挟んで望める。遠くには、
薯榔尖,石筍尖、基隆河の谷を挟んで
中央尖や
峰頭尖が見える。こうした、尖った峰々がたくさんあるのが平渓の山の特徴だ。
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下り道の岩場から見る主稜線、姜子寮山を中央にパノラマが広がる |
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靈巖寺で貰ったパンフレット |
更に岩の露出した部分もある道を半時間ほど下り、14時5分、靈巖禪寺についた。ここは、浅い洞窟の上から滴り落ちる水が、長い間をかけ鍾乳柱となった場所である。鍾乳柱が観音像に見立てられ、信仰の対象となっている滴水觀音だ。境内の前庭で休んで談笑していると、寺の人と思われる女性がやってきて、日本人かと尋ねられた。普段、このような場所へ日本人が観光にやってくることは無いので、不思議に思ったそうだ。毎年8月から10月頃まで、鹿子百合という稀少種の百合の花が咲くそうだ。この花の名付けは日本人で、日本との縁も深いと説明してくれた。滴水觀音には、もともと顔が彫られていたが、不心得者がこの首を持って行ってしまったそうだ。それからまた年月がたち、像の肩に当たる部分がだいぶ優しくなってきているとのこと。
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苔に覆われた第二歩道と立派な橋 |
半時間ほどゆっくりと休憩し、最終目的地の嶺腳へ下る。今年五月に訪れた時は、第一歩道を登った。今回は第二歩道を下る。寺のすぐ下から道が始まるが、自動車でやってこれるので、この道を歩くのは、我々のような登山者ぐらいのものだろう。石段道は広くて立派だが、苔がびっしりと生えている。絨毯のように厚い苔は、逆にあまり滑らない。10分ほどで下りきり、台車道についた。のこりは、この舗装路を下っていくだけだ。民家を通り過ぎるとき、番犬四匹がけたたましく吠えかかる。鎖で繋がれているので、やってこれないが。靈巖禪寺から約30分、15時8分に嶺腳駅に着いた。795番のバスで帰ることも考えていたが、あと十数分で汽車がやってくるので、今回は平渓線で帰ることにする。駅前の雑貨屋でビールを買って、乾杯する。長い歩きの後、ビールはまた格別だ。
汐止から平渓へ山越えをしたことになるが、歩行距離は約12kmである。休憩込みの行動時間7時間55分、登り累計は973mである。姜子寮山から中窯尖への縦走路が意外に苦労だった。山道の程度はクラス4、体力要求もクラス4である。経験者向きのルートである。10月になり、山登りには暑くなく、絶好な季節がやって来た。
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