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2015-10-31

2015年10月31日 台中谷關白毛山 谷關七雄の一座を負荷訓練で登る

白毛山山頂のメンバー
11月末に、標高3000m超の登山を予定している。登山メンバーのうちには、日帰登山の装備では体力的に問題ないが、まだ重量のあるザックを担いで登った経験が少ないメンバーもいる。そこで、今回の負荷訓練山行を実施した。実際、月末の登山に必要な装備の重量を担いで登り、問題ないかチェックする意味もある。結果としては、全員余裕でこなし月末登山への自信を深めた。
時計回りに回遊ルート
筆者が、40年近く前に日本で夏山縦走であれ雪山登山であれ行っていた頃は、負荷重量はけっこうあった。一週間の夏山縦走で言えばメンバー一人あたり30キロ弱担いでいた。その後装備の進歩でザックは担ぎやすくなり、中にいれる装備は軽量化され総重量は少なくなっている。40年前のキスリングは重量がすべて肩に来るので、現在の腰に荷重を逃がすザックに比べて、辛かった。今回の訓練登山は一人あたり15キロが目標である。

単一ピーク登攀
日本でも登山は、盛んなスポーツになっている。日本に帰国し自ら山に登ると、それを肌で感じる。しかし、単独行も含めどのようなグループで登るのか、それには知恵が必要だ。SNSなどの手段を通じて毎回毎回異なるグループに参加して登るのか、それとも比較的固定されたメンバーで登るのか。自分が登山を始めた頃は、勿論SNSなどなく、ほぼ固定的な山岳会や学校の山岳部などが登山のグループであった。こうした組織であれば、経験者が新人に教育やトレーニングでき、またメンバー相互に理解していた。SNSで集合し、いきなり登山では訓練は勿論、お互いにどのような人格や体力なのかもわからない。筆者は、ここでTaipei Hiker ClubとしてSNS上にグループを設けている。そして、その中にコアメンバーという定義で、一緒に訓練などをして登っていく人員を募集、実際に数名が活動している。今回の訓練登山もそうした活動の一つである。逆に言うと、コアメンバーでない者は、自分が主催する困難度の高い登山には同行出来ない。それは、山での問題を極力少なくするための必要条件である。

谷關七雄と白毛山
今回の訓練登山は、もともと宜蘭三角崙山に行くつもりであったが。ところが、東北部は天気が良くないようなので、天気が安定している中部に変更、場所として谷關七雄の一つ白毛山に変更した。白毛山は標高差が今回の高山登山に近く、高度も1500mあるので条件としてはOKだ。坂がきついことも、月末登山の場所は高度が高いことを考えると、訓練効果にはプラスだ。結果として、前回二日掛けて四座登った谷關七雄に更に一座を加えたわけだ。

1.6km地点から産業道路を登る
台中は距離が遠いので、朝6時に集合する。今回は四名の山行だ。曇りの台北をあとにして南下する。天気がよくなってくる。約2時間と少し、東勢を抜けて成功国民小学校前のコンビニに立ち寄る。中部横断道路を進むにつれ、谷關の山々が迫ってくる。右に白毛山が大きくなってきた。8時28分、馬鞍壩への道を右に下りる。このダム堤防の上は、一車線だが車が通ることができる。少し下流にかかっている白鹿吊橋は、渡れなくなって久しいようだ。堤防上を渡りすぐ右に折れる。ちょうど道路工事中だ。一車線の細い道は、一部は最近舗装し直されている。赤い鉄の橋を渡り、左に折れて登っていく。約1.6kmの地点まで来ると、道路表面の凹凸が大きく、四駆でないと難しいそうだ。近くにすでに三台車が泊めてあり、8時35分そのわきに駐車する。台北から所要時間ちょうど2時間半である。

産業道路を登る
8時51分、出発する。今回は、各自ザックにかなりの水を入れて重量を稼いでいる。万一登山中、体力的に問題ある時は、その場で捨てることが前提である。産業道路を登っていく。結構勾配がきつい。重量を担いでいるので、小幅で登る。道はジグザグに高度を稼ぐ。9時25分、分岐に着く。右は下山の時に通る道だ。道標は登山道入口まで0.3kmとある。駐車場所から1.3km登ってきた。9時33分、登山口に到着する。この山は、人気があるようで大勢のグループが写真を写している。左に未舗装の林道が続く。これは以前伐採が行われていた頃の名残なのだろう。

登山道入口
急坂を登る
登山道は、すぐに階段で始まる。標高約920mの登山口から、1200m超の稜線に上がるまで急坂が続く。9時50分、二度目の休憩をとる。登りは25分に5分休憩のペースだ。10時3分、登山道0.5kmの里程柱を過ぎる。竹や広葉樹の林の中をひたすら登る。ところどころ、大きな木の根を乗り越える。よく歩かれ整備されている道なので、同じペースを保って登れる。10時17分、勾配が弱まってきた。10時20分、稜線上に上がりそこの休憩場所で休みを取る。樹木がぽっかり開いていて、真正面に東卯山とそれから左に屋我尾山への稜線が見える。二週間前に登った山だ。その右奥は白姑大山だ。

尾根に上がったところで、東卯山が真正面に見える
1kmキロポストを過ぎる
しばらくは稜線上の緩やかな道だ。1kmキロポストを過ぎて、急な坂を登る。広い景色が眼前に広がる。遠くは、もうひとつもやもやしているのが残念だ。大雪山林道上部の鳶嘴山稍來山から先ほどの東卯山、そして谷を挟んで白姑大山から八仙山への山々が屏風の様に谷の向こうに展開している。谷關七雄の末っ子唐麻丹山も、ボンヤリだが、判別できる。稜線上の小さなピークを越し、下ったところで休憩する。11時、眼前の坂を登りきれば山頂だ。皆、もう休憩かと余裕である。

尾根上からのパノラマ
下方に大甲渓を見て急登を登る
落差約200mの急坂が始まる。1.5km路程柱を超えると、補助ロープの急坂が始まる。途切れることのない急坂は辛い。約15分ほどで、樹木が切れ振り返ると大甲渓の広い河川敷が下方に望める。その向こうは台中付近だが、残念なことにボンヤリしていてはっきりしない。11時18分、木製梯子が現れる。梯子を登った後も、相変わらず急坂だ。11時35分、2kmの路程柱を過ぎる。その少し先からしばらく、崩落地帯になり、わきに木製手摺が設けられている。樹木がないので展望できるが、ガスってきたので遠くは見えなくなってしまった。先ほど登り途中で見えていたのは幸いだ。最後の坂を登り切り11時48分、白毛山山頂(標高1522m)に着く。約3時間の登りだ。しかも、全員余裕しゃくしゃくである。すでに登っていている登山者で、頂上は賑やかだ。涼亭に取り付けてある寒暖計は17度を示している。頂上の周囲は樹木で展望はない。

山頂下の崩落部分から展望する
阿冷山への縦走路分岐
今日は、ゆっくりと昼食をとる。荷重としてもってきたコンロを出し、湯を沸かす。それでコーヒーをいれる。とにかく水は多いので問題ない。冷えたビールを取り出す。涼亭にいる他の登山者ともシェアする。約1時間ほど過ごし、12時45分下山を始める。往路を下るかそれとももう一つのルートで下るか、決めていなかったが時間も早いので、別ルートで下山することにする。こちらは、往路と比べると整備状況や歩行されている程度は落ちるが、全体の平均勾配は小さい。

竹林の向こうに1540峰


山頂近くは、結構下りが急だ。5分ほどで、阿冷山への縦走路を左に分ける。右にとり下る。竹林からは前方に1540峰が見える。13時5分、白毛林道への道が左に分岐する。右に稜線を登りはじめる。落ち葉が厚く敷かれた道を登る。背中の荷物が重い。13時20分、1540峰の直下を右に巻き、分岐に来る。左には白毛山西南峰へ続くと道標がある。また急坂が続く。幸いにボランティアによる補助ロープが危ないところに取り付けてある。13時52分、左に樹木が切れた場所で少し休憩する。

白毛林道への分岐
補助ロープの急坂を下る
引き続き急坂を下る。二人の登山者が登ってきた。途中道に迷って時間がかかったそうだ。すでにこの時間、頂上までまだ1時間半はかかるだろう。数分下っていくと、坂が緩やかになり尾根を離れ、杉造林に入る。足元は杉の落ち葉が厚い。台湾も林業は採算があわなくなっているので、この周辺も伐採はないだろう。ちょっと日本の山の麓のような感じだ。しばらく緩やかな山腹道が続き、また急坂を下る。下りきると、大きな水槽が現れる。まもなく、産業道路に出る。道なり下ると、果樹園が現れ犬の吠え声とともに民家が見える。見上げれば、下りてきた山がすでに高い。更に下り、左に道をわけてまもなく、14時58分休憩を取る。

杉林の中を下る
犬が吠える、背後に民家が現れた
また坂道を下っていく。橋を越えて、上りが始まる。長い下りの後の登りは、すこしつらい。道端に廃棄さればスクーターがホコリをかぶって置き去りにされている。5分ほどの登り返しで、朝に通りすぎた分岐に来る。左へ、残りの道を駐車した車で歩く。15分ほどの下りで、15時30分に車のところまで戻ってきた。

産業道路を下る




休憩込みで行動時間約6時間40分である。約9.2km、登攀累計約920mだ。休憩はそこそこ取っているので、負荷を考えると結構よいペースである。勿論、高山は高度が更に1,500m高いわけで、空気も地上の数割になる。同じ環境で登れるわけでないが、今回の訓練山行でメンバー自身も、また連れて行く自分も自信を増すことが出来た。軽装で登れば、白毛山はルートは2、体力的もクラスである。もし、下山にこの山行と同じにもう一つの道を行くのであれば、ルートはクラス3である。

2015-10-30

2015年10月29日 萬里北八斗山 名勝野柳を望む海の山を歩く

海岸線わきの北八斗山、左奥は丁火巧山。海岸線の遠くには原子力発電所
秋が訪れ,日差しが強く遮る樹木があまり多くない海岸際の山を登るのに適した季節がやって来た。今回は、月初に訪れた萬里瑪鎖山の隣の山塊ピーク、北八斗山を登った。この山塊は、標高472mの丁火巧山を最高に364mの八斗山などのピークを有し、そこそこサイズがある。全部を歩く場合は、それなりに時間が必要だ。今回は、その山塊の内、観光地野柳に近い北八斗山を海岸際の稜線から登り、別の稜線をへて下った。これらの稜線道は、北八斗山稜と駱駝峰稜と呼ばれるが、それぞれ最近ボランティアの登山者によって開かれたものである。

西側北八斗山稜から登り、東側の駱駝峰稜をへて下る
標高二百メートルクラスの低山ハイキング
台北近郊の山は、陽明山山系など日本統治時代の国立公園であれば、早くから登山道があったが、それ以外は今のように多くの登山道があったわけではない。今では、台湾は経済が豊かになっているが、以前は一般には登山をするような経済的余裕はなかった。日本も(また他の先進諸国でも)同じだが、登山はもともと金持ちの道楽である。その頃は、目的地はチャレンジがいのある高山などであり、いつでも行ける郊外の裏山ではない。だれも登山趣味でそんな山など登ろうとは思わなかった。経済的余裕が生まれ、中高年が郊外の山を多く登るようになっている。日本と同様に元気な退職者が増えていることもある。そうした人たちが、今ボランティアとして近郊の山道の整備を行っているわけだ。SNSの発達が、登山活動を活発にするのに役立っている。

台北から山を挟んで北東にある海岸線の山、陽明山山系の東側になる
今回は、出発がゆっくりだ。今日はガツガツ歩く山登りではなく、気楽に歩いた後海岸に降りて、漁港近くの店で海鮮料理を食べ帰る予定だ。実際、この数年間で台北近郊の主な地域はほぼカバーしてしまった。勿論まだ歩いていないところもあるが、それぞれの地域の様子が分かったので、近郊登山は訓練を目的にするものでなければ、最近一生懸命歩く気がしない。山登りは、いろいろな形態や目的があってもいい。一人で歩き始めた山だが、今は単独行がほとんどなくなってしまった。仲間との歩きも、登山の醍醐味である。

台北西バスターミナル1815番バス乗場
8時10分発の1815番バスに乗るべく、台北西バスターミナルに集合する。今日は、メンバー8名である。そのうち一人は、途中から乗車するので、バスターミナルからは7人で出発。平日のこの時間帯、市内を行くのには時間がかかる。台北市府ターミナルを通り過ぎ、高速道路にのる。基隆市内を過ぎ、萬裡野柳バス停には9時48分到着。台北西バスターミナルから、約1時間40分である。

旧台二号線わきの登山口
稜線に出たところで、景色が広がる
9時58分、支度をしてバスがやって来た旧台二号線を登り気味に戻っていく。新しい道が出来たので、四車線の車道はほとんど車の往来がない。3分ほどで、右に北八斗山稜への入口がある。入口の木につけられた藍天隊の道標は今年10月10日の日付だ。まだ真新しい。山腹の道を登り、数分で稜線上にでる。すぐ眼前に野柳港と野柳の半島が広がる。湾の右に連なる稜線は、駱駝峰稜だ。遠く水平線はぼんやりしている。中国本土から風で飛ばされてやってきたPM2.5のためだ。中国の環境を無視した経済発展は、自国民の健康に障害を与えるだけでなく、他国にまで影響している。実に困ったものだ。多く野柳観光にやってくる中国国民は、ぼんやりした景色が自国のせいだとわかっているのだろうか。

更に高度が上がったところでの展望、右奥は下山に通った駱駝峰稜、海に突き出た半島が野柳風景区
稜線上の道
他の海岸際の山稜が同じように、ここも低い灌木が生えている。右は切り立った崖だ。登るにつれ、見える範囲が広がる。10時18分、高度も100m近くなり、ボンヤリだが遠くに基隆嶼も見えるようになる。尾根はここで方向を変える。東側野柳湾方向は見えなくなり、西側の海岸線が足元に広がる。金山方向に連なる海岸線には原子力発電所が見える。その奥方向は、陽明山山系だが、やはりボンヤリだ。更に行くと、道は左に下がり気味に進み、10時35分最低部に到着、そこで大きく180度方向を変えてまた海側に登っていく。

金山方向の海を望む
廃棄されたトーチカ入口
10時43分、だいぶ登ってきた。高度は150mぐらい。少し休憩する。ここからは、今歩いてきた稜線の後ろにに海岸線と大海原が広がる。海の近い山の眺めは格別だ。メンバーが持ってきた自製アイスキャンディーをいただく。日差しが強くなってきて、冷たいものが嬉しい。まだ稜線道は続く。前方には丁火巧山が控え、右には後に登る北八斗山がある。緩やかな山稜を進む。そのうち灌木の背が高くなる。ここまで来ると季節風があまり当たらなくなるのだろう。溝が掘ってあるのがわかる。ここも清仏戦争の時の塹壕があるのだ。11時10分、トーチカがある。これは戦後国民党政府によって作られたものだ。今も昔も海岸線は防衛上重要なものだ。

別荘地が山腹に広がる、向こうの山は丁火巧山
不法投棄のゴミの山
左側が開け、緩やかな斜面には別荘群が見える。別のトーチカを通り過ぎ、そのうち道はジメジメした場所を過ぎる。不法投棄されたゴミがアチラコチラに散らばっている。美しい別荘の裏山はゴミの山、実に皮肉なものだ。別荘の住人は知っているのか、それとも目をつぶっているだけか。11時半、いきなり開けた場所にでる。廃棄された倉庫がある。その前を通り過ぎ、急坂を登り切る。そこで、廃棄産業道路に合流する。左右は草に覆われ、細い踏み跡だけの産業道路を登る。日差しが強くつらい。

北八斗山東南峰
北八斗山頂上の筆者
11時37分、左に八斗山方向の道を分岐する。そのまま、産業道路を登る。11時44分、北八斗山東南峰に来る。峰といっても、コンクリ基石が道端にあるだけだが。わきからの景色は広くて素晴らしい。やって来た北八斗山稜が下方に連なる。野柳は遠い。少し休んだ後、産業道路の末端から始まる山道を行く。しばらく平な道は、一度大きく下り登り返す。11時56分、そこが北八斗山頂上(標高246m)である。基石が埋まる頂上はそこそこ広い。北方向が開けているので、海側の展望が広がる。先ほどの東南峰よりさらに北八斗山稜の様子がわかる。食事をとりゆっくり休憩する。

北八斗山頂上からの展望
廃棄産業道路わきの山道入口
12時45分、長い昼食休憩のあと下山を開始する。もともと、時間が早く余裕があれば、八斗山を往復する予定であったが、暑いことや時間も遅いので今日はスキップする。いずれまた来ればよい。今日は、気楽な山登りである。往路を戻り、産業道路を下る。別荘わきからの分岐をそのまま通り過ぎ、さらに産業道路を下っていく。ジグザグの道のわきに、右へ山道が分岐する。産業道路はそのまま比佛利山莊へ行くが、通り過ぎお断りで文句を言われるようなので、少し遠回りだが山道を下る。急な道が続き、菜園をすぎて13時30分沢に下る。ここで小休憩する。

菜園わきを行く
農道と思われる道を進み、数分で民家のわきにでて、旧台二号線に着く。民家の黒犬がやってくるが、おとなしい。車道を左に登っていく。日差しを遮るもののなく、車道歩きはつらい。右に海が見えるのが慰めだ。比佛利山莊の正門前を通り過ぎ、13時53分、仁愛之家入口に着く。門を通り過ぎ進む。ここは斜面に広がる公立老人ホームである。下っていくが、地図で確認すると駱駝峰稜道の入口とは随分離れている。そこで、確認し戻っていく。野柳村登山道の入口でもある場所は、稜線に近い場所だ。道案内看板のある場所は、住民が手入れする花壇になっている。

旧台二号線から海方向を見る
仁愛之家上部にある野柳村歩道入口
野柳村登山道を少し登ると、すぐ右に急な土の道が登っていく。入口の藍天隊道標は、これも10月10日の日付である。補助ロープのある急坂が続く。数分で稜線は平らになる。ところどころ、左側の灌木がきれて展望ができる。下は野柳湾が広がっている。14時38分、トーチカ後を過ぎる。ここも海岸線に面し、軍事的に重要な場所だ。以前であればオフリミットの場所である。進むに連れ、所々から見える野柳半島がだんだん近づいてくる。14時49分、野柳港山(標高105m)と過ぎる。

駱駝峰稜から野柳を俯瞰する
その先から、稜線は大きく下り始める。急な坂道を下って行く。ここは身を乗り出す形なので、すこし緊張する。その後も、左の断崖の上端を下っていく。港湾の様子がよく分かる。その先の野柳半島もだいぶ近い。15時半、下りきり車道に下りる。ここからは、観光地域だ。外国人も含めた観光客が、奇岩を背景に写真を撮っている。我々は、ここで少し休憩する。

急な崖部分
15時45分、バスのりばへ野柳方向へ歩く。左の断崖が高い、先ほどはあそこを歩いていたのだ。数分で、東澳漁港バス停に来る。そこで待っていた地元の人が、F923バスがすぐやってくるという。また、途中の龜吼漁港には安い海鮮料理店があるので、紹介するという。その勧めに従い、程なくやって来たバスで向かう。3,4分の乗車で到着し、海鮮料理店へ案内してもらう。そこでは、安くておいしい料理を食べることができた。前回もそうだが、地元の人の案内で結構よいことがある。食事を終え、5時半暗くなってきた萬里をあとにした。

駱駝峰稜末端部分
食事をした龜吼漁港の海鮮料理店
秋とは言え、太陽が照ると日中はやはり暑い。勿論夏ほどではないが、森以外の部分を歩くことも多く、それなりに疲れる。気温が高いと、やはりバテやすい。約9.5kmを休憩込みで約6時間で歩いている。登攀高度は累計で360m、初期の目論見通り気楽なハイキングである。とは言え、海と山の景色は素晴らしく、これはこれで十分に意義のある山行である。ルートはクラス3、体力はクラス2である。山道は万人向けではない。初心者は、すこし危なく感じるところがあるかもしれない。

2015-10-20

2015年10月18日 台中谷關七雄 八仙山 - 唐麻丹山縱走

東卯山近くから望む八仙山(中央の最高ピーク)と唐瑪丹山(右下の枝尾根上ピーク)
前日の屋我尾山-東卯山縦走に引き続き、谷關七雄の山歩きである。昨日の山とは谷を挟んでそびえる八仙山から唐麻丹山への縦走だ。八仙山は、標高2366mで谷關七雄中の最高峰である。日本統治時代に標高が約八千尺あるので、この命名がされたということだ。大正初期に森林資源調査が行われ、昭和になり本格的な伐採が行われるようになった。日本統治時代には、台湾には三大林業場があり以前訪れた宜蘭大平山もその一つである。阿里山を入れた三大林業場の他二ヶ所に比べると、八仙山は規模がもう一つだったということだが、当時は切り出した木材搬出のための森林鉄道が走っていたそうだ。実際、登山道以外に当時の林道(或いは軌道床)だったと思われるところも見かけた。戦後も引き続き伐採が行われたが、ここも今は林業は去り観光地八仙山国家森林遊園区となっている。

松鶴部落から時計回りに縦走
歩き始めの登山口は約2km地点
唐麻丹山(トマタン山)は標高1305mで、谷關七雄の内一番低く、末っ子的な存在だ。だが登山口からの道はとても急峻で、馬鹿にできない。今日の縦走は、したがって最高峰から最低峰への縦走となる。二者の落差は約1000m、下りに取ったとはいえ、縦走路は急な下りが現れそれなりに苦労する。登りも大変、下りも苦労、八唐縦走はきつい山歩きである。

夜明け前の松鶴部落、奥には白毛山の山並み
一番目の送電鉄塔から松鶴部落方向を望む
今日の行程は、ネット上の記録を見ると最低でも10時間を要している。昨日に引き続きなので、まだ疲れも十分に回復していない状態での登山で、それなりに時間がかかることが予想される。そこで未明4時起床、5時出発である。民宿から車で登山口を目指す。我々の登山口は、八仙山国家森林遊園区の登山口ではなく、松鶴部落の端にあるものだ。まだ暗い道を進む。地図と見比べ進む。沢を渡り行きすすむと、民家のところで右に道が上がっていく。降りて確認すると、ちょうど出てきた住人が登山口は、戻って左に曲がったところだという。その言葉に従い、橋の近くでもどり、左に曲がり登っていく。ステンレス水タンクが見える広場に、登山者の車と思われる一台が停まっている。ここが登山口であった。時刻は5時25分だ。

保線路を登る
5時31分、支度をすませ、ヘッドライトを点灯し出発する。ゆるい坂を行く。夜の底がすこし白んできた。振り返れば松鶴部落が谷關七雄の一つ白老山の山並みシルエットの底に佇んでいる。5分ほどで、八仙山支稜の登山道分岐に来る。標高は約750m、頂上まで約1600mの高度差を稼ぐ長い登りの始まりだ。支稜上には、二ヶ所送電鉄塔があるのでそこまでは、保線路を歩く。つづら折りの保線道は、状態が良い。ジグザグに高度を稼ぎ、5時52分下の鉄塔に着く。茶と黒の二匹の犬がついてきた。ここで小休憩する。

急坂を登る
急坂が続く
6時歩き始める。すでに明るく、ヘッドライトはもういらない。起床したとき民宿から見上げる空は、星がまたたいていたが、今日も快晴の好天だ。今回の谷関山行は、実は初め六月に来る予定であったが、台風の来襲で八月に延期、ところがまたもや悪天候で延期、今回は三度目の正直である。二回待ったかいがあったというところだ。ジグザグ道を進み、6時17分二つ目の送電鉄塔に来る。保線路はここで終了、これからは急坂山道である。約30分ごとの休憩を取るペースで、坂を登っていく。急な場所には、ボランティアによる補助ロープも取り付けてある。

ゆるい登りを行く、朝日が森に差し込んできた
八仙山登山道分岐部、下側から登ってきた
7時40分、急坂が一段落し、しばらく緩やかな部分が現れる。標高約1500mである。休憩後広い枝尾根上の道を進む。8時9分、昔の木材搬出のための道と思われる部分に来る。標高1700m、頂上までの高度差の半分以上をカバーした。8時35分、八仙山登山道に出る。この道は森林遊楽区の公式登山道で、整備がされている。これからは、この道を頂上へ登っていく。階段なども現れる。8時48分、涼亭があらわれる。ここでちょっと長めに休憩をとる。涼亭の少し先、右に開けている場所からは、昨日登った東卯山の頂上が同じ高さに見える。三つの反射板が判別できる。

登山道約3.5km地点の涼亭
東卯山山頂、反射板が見える
旧林道(と思われる)から離れ稜線上の急坂を登る
急な階段道が続く
9時10分、頂上へまた歩き始める。ここは登山道の3.5km地点、頂上までまだ2.5kmある。標高差は約500mである。9時30分、それまでのゆるい坂道が終わり、最後の急登が始まる。旧林道は直進していくが、頂上へはここから尾根に取り付いて登っていく。急坂階段道が続く。9時41分、右側の樹木がきれて、対岸の横嶺山が見える。その前には、昨日の縦走路の尾根があり、崖が見える。崖は大きな崩壊で、岩壁がむき出しに谷に落ちている。

木材搬出ロープウェイ台の遺跡と説明板
頂上まであとわずかだ
10時24分、急登の道は山腹の緩やかな道となる。苔に覆われた山腹には、昔切り倒された切り株が緑に朽ちている。10時32分、伐採が盛んなころに使用された、搬出用ロープウェイ台が残っている。丸太を使用した、簡素なものだがここから木材が送り出されていたのだ。わきには、説明板が設けられている。少し下りまた、登り返す。伐採作業が行われていた頃のもと思われる、電線用の碍子が道脇の樹木に取り付けられ残っている。最後の階段道を登り切り、10時57分八仙山(標高2366m)頂上に到着する。広い頂上には、三角点と涼亭がある。周囲は樹木で、展望は全く無い。単独登山者がすでに到着している。八仙森林園区の登山口から登ってきたそうだ。涼亭内に取り付けられている寒暖計は20度を示している。

八仙山頂上
八仙山から急坂をくだる
ここは今日の最高点だが、まだ先は長い。長めの昼食休憩の後、11時40分出発する。ここからは、また非正規路で、踏跡を追っていく。急な下りが続き、高度を下げていく。左側が開けて、東側の幾重にも重なる山並みが見える。初めてでまだどの山なのか確信がないが、右のほうの山塊は有勝山だろう。遠くに雲がかぶっているのは、中央山脈の能高山あたりだろうか。台湾は実に山が数えきれないほどある。主稜線上の道は、一部クマザサの密生部分があるが、その他は落ち葉の乾いた道で、歩きやすい。12時40分、2176峰に到着、休憩を取る。

主稜線から東を眺める、向こうの山は有勝山だろう
主稜線から急坂を下る
縦走は、ここから主稜線を離れ右へ折れて唐麻丹山へ下っていく。高度差約400mの急坂が続く。伐採していた頃のワイヤーが地面に埋まっている。うんざりするほどの急坂下りを終え、13時42分休憩を取る。休んでいると、単独の登山者がやって来た。彼は、松鶴部落の登山口でちょうど我々が出発するとき準備をしていた登山者より、我々が八唐縦走をするというのを聞いて、追っかけて来たそうだ。一人でこの長い縦走路をすべて歩くのは、心細いようで食事もそこそこにやって来たそうだ。今回メンバーの一人が、少しバテ気味で我々の歩みは遅い。

支稜線から北側を望む、手前の山並みは昨日歩いた東卯山から屋我尾山の稜線、背後は横嶺山から稍來山
小ピークを越えていく
休憩後、唐麻丹山への支稜は小さいピークを越していく。山ツツジの密林をすぎると、右に展望が開ける。昨日歩いた、屋我尾山から東卯山への稜線と、その後ろに横嶺山から稍來山への稜線が望める。14時35分、1843峰のわきで休憩する。今の速度だと、日暮れ前に登山口まで歩くのは無理である。目標を唐麻丹山頂上へ17時までに到着を目指す。唐麻丹山からの山道は、公園管理下の整備された道なので、暗くなってもヘッドライトで下ることは、まだ可能である。今歩いているような、標識リボンが頼りの踏み跡だと、暗くなってしまうと困難度は非常に高くなってしまう。

1843峰からの眺め
尾根を越えていく水道管
唐麻丹山への最低鞍部を目指し更に600mの落差を下る。こちらは、主稜線からの下り坂に比べれば勾配は緩いが、長い下りが続く。16時過ぎ、稜線を越えていく水管を何本か見る。森に差し込む日差しは、だいぶ傾き夕方の様子が濃厚だ。16時22分、鞍部に到着。休憩を取る。休憩後は、唐麻丹山へ向けて標高差約100mの登り返しだ。先に一つピークを越え、16時45分唐麻丹山歩道に合流する。ここからは、整備された登山道だ。2.5km里程ポストを過ぎる。頂上まではあと500mぐらいだ。坂を登っていく。16時53分、唐麻丹山頂上(標高1305m)に到着。遅れてくる、三名を頂上で待つ。対岸の白毛山は、すでに黄金に輝く雲の下だ。

唐瑪丹山山頂
夕闇迫る白毛山
夕闇迫る中の1.5kmキロポスト
17時16分、遅れてやって来た三名を入れて下山を始める。日没まではもう半時間もない。距離は2km、標高差650mの下りである。距離は短いが高度差が大きいので、勢い急坂の下りである。17時34分、1.5km里程ポストを過ぎてまもなく、森の中をゆく道は暗くなってきた。ヘッドライトを点灯する。17時45分、太陽は山の向こうに沈み、空は赤く燃え上がる。暗闇の下山は、普段極力避けているが、この風景はこうした時でなければ拝めないのも事実だ。ギャップのある部分が多く現れる。みな慎重に下っていく。18時、涼亭ですこし休憩する。残りはまだ1kmある。慎重に下り、汗が流れる。18時48分、とうとう裡冷林道の登山口に到着した。2kmの下りに1時間半、やはり暗闇の下山は時間を要する。身の回りを片付け、19時車に乗り込み帰京の途についた。

日没の夕焼け
唐瑪丹山登山口
今日の縦走は、実に13時間20分である。途中で長い休憩もとってはいるが、やはり高度差が大きく、長い道は当然時間を要する。歩行距離約17km、登攀累計1820mである。困難度は、ルートはクラス4、体力要求度は5である。体力に自信がある登山経験者向けだ。今回の1回の訪問で谷關七雄の内の4座をカバーした。いずれまた、他の三座を訪れることはあるだろう。