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白毛山山頂のメンバー |
11月末に、標高3000m超の登山を予定している。登山メンバーのうちには、日帰登山の装備では体力的に問題ないが、まだ重量のあるザックを担いで登った経験が少ないメンバーもいる。そこで、今回の負荷訓練山行を実施した。実際、月末の登山に必要な装備の重量を担いで登り、問題ないかチェックする意味もある。結果としては、全員余裕でこなし月末登山への自信を深めた。
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時計回りに回遊ルート |
筆者が、40年近く前に日本で夏山縦走であれ雪山登山であれ行っていた頃は、負荷重量はけっこうあった。一週間の夏山縦走で言えばメンバー一人あたり30キロ弱担いでいた。その後装備の進歩でザックは担ぎやすくなり、中にいれる装備は軽量化され総重量は少なくなっている。40年前のキスリングは重量がすべて肩に来るので、現在の腰に荷重を逃がすザックに比べて、辛かった。今回の訓練登山は一人あたり15キロが目標である。
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単一ピーク登攀 |
日本でも登山は、盛んなスポーツになっている。日本に帰国し自ら山に登ると、それを肌で感じる。しかし、単独行も含めどのようなグループで登るのか、それには知恵が必要だ。SNSなどの手段を通じて毎回毎回異なるグループに参加して登るのか、それとも比較的固定されたメンバーで登るのか。自分が登山を始めた頃は、勿論SNSなどなく、ほぼ固定的な山岳会や学校の山岳部などが登山のグループであった。こうした組織であれば、経験者が新人に教育やトレーニングでき、またメンバー相互に理解していた。SNSで集合し、いきなり登山では訓練は勿論、お互いにどのような人格や体力なのかもわからない。筆者は、ここで
Taipei Hiker ClubとしてSNS上にグループを設けている。そして、その中にコアメンバーという定義で、一緒に訓練などをして登っていく人員を募集、実際に数名が活動している。今回の訓練登山もそうした活動の一つである。逆に言うと、コアメンバーでない者は、自分が主催する困難度の高い登山には同行出来ない。それは、山での問題を極力少なくするための必要条件である。
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谷關七雄と白毛山 |
今回の訓練登山は、もともと
宜蘭三角崙山に行くつもりであったが。ところが、東北部は天気が良くないようなので、天気が安定している中部に変更、場所として谷關七雄の一つ白毛山に変更した。白毛山は標高差が今回の高山登山に近く、高度も1500mあるので条件としてはOKだ。坂がきついことも、月末登山の場所は高度が高いことを考えると、訓練効果にはプラスだ。結果として、前回二日掛けて四座登った谷關七雄に更に一座を加えたわけだ。
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1.6km地点から産業道路を登る |
台中は距離が遠いので、朝6時に集合する。今回は四名の山行だ。曇りの台北をあとにして南下する。天気がよくなってくる。約2時間と少し、東勢を抜けて成功国民小学校前のコンビニに立ち寄る。中部横断道路を進むにつれ、谷關の山々が迫ってくる。右に白毛山が大きくなってきた。8時28分、馬鞍壩への道を右に下りる。このダム堤防の上は、一車線だが車が通ることができる。少し下流にかかっている白鹿吊橋は、渡れなくなって久しいようだ。堤防上を渡りすぐ右に折れる。ちょうど道路工事中だ。一車線の細い道は、一部は最近舗装し直されている。赤い鉄の橋を渡り、左に折れて登っていく。約1.6kmの地点まで来ると、道路表面の凹凸が大きく、四駆でないと難しいそうだ。近くにすでに三台車が泊めてあり、8時35分そのわきに駐車する。台北から所要時間ちょうど2時間半である。
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産業道路を登る |
8時51分、出発する。今回は、各自ザックにかなりの水を入れて重量を稼いでいる。万一登山中、体力的に問題ある時は、その場で捨てることが前提である。産業道路を登っていく。結構勾配がきつい。重量を担いでいるので、小幅で登る。道はジグザグに高度を稼ぐ。9時25分、分岐に着く。右は下山の時に通る道だ。道標は登山道入口まで0.3kmとある。駐車場所から1.3km登ってきた。9時33分、登山口に到着する。この山は、人気があるようで大勢のグループが写真を写している。左に未舗装の林道が続く。これは以前伐採が行われていた頃の名残なのだろう。
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登山道入口 |
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急坂を登る |
登山道は、すぐに階段で始まる。標高約920mの登山口から、1200m超の稜線に上がるまで急坂が続く。9時50分、二度目の休憩をとる。登りは25分に5分休憩のペースだ。10時3分、登山道0.5kmの里程柱を過ぎる。竹や広葉樹の林の中をひたすら登る。ところどころ、大きな木の根を乗り越える。よく歩かれ整備されている道なので、同じペースを保って登れる。10時17分、勾配が弱まってきた。10時20分、稜線上に上がりそこの休憩場所で休みを取る。樹木がぽっかり開いていて、真正面に
東卯山とそれから左に屋我尾山への稜線が見える。二週間前に登った山だ。その右奥は白姑大山だ。
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尾根に上がったところで、東卯山が真正面に見える |
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1kmキロポストを過ぎる |
しばらくは稜線上の緩やかな道だ。1kmキロポストを過ぎて、急な坂を登る。広い景色が眼前に広がる。遠くは、もうひとつもやもやしているのが残念だ。大雪山林道上部の
鳶嘴山稍來山から先ほどの東卯山、そして谷を挟んで白姑大山から
八仙山への山々が屏風の様に谷の向こうに展開している。谷關七雄の末っ子
唐麻丹山も、ボンヤリだが、判別できる。稜線上の小さなピークを越し、下ったところで休憩する。11時、眼前の坂を登りきれば山頂だ。皆、もう休憩かと余裕である。
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尾根上からのパノラマ |
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下方に大甲渓を見て急登を登る |
落差約200mの急坂が始まる。1.5km路程柱を超えると、補助ロープの急坂が始まる。途切れることのない急坂は辛い。約15分ほどで、樹木が切れ振り返ると大甲渓の広い河川敷が下方に望める。その向こうは台中付近だが、残念なことにボンヤリしていてはっきりしない。11時18分、木製梯子が現れる。梯子を登った後も、相変わらず急坂だ。11時35分、2kmの路程柱を過ぎる。その少し先からしばらく、崩落地帯になり、わきに木製手摺が設けられている。樹木がないので展望できるが、ガスってきたので遠くは見えなくなってしまった。先ほど登り途中で見えていたのは幸いだ。最後の坂を登り切り11時48分、白毛山山頂(標高1522m)に着く。約3時間の登りだ。しかも、全員余裕しゃくしゃくである。すでに登っていている登山者で、頂上は賑やかだ。涼亭に取り付けてある寒暖計は17度を示している。頂上の周囲は樹木で展望はない。
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山頂下の崩落部分から展望する |
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阿冷山への縦走路分岐 |
今日は、ゆっくりと昼食をとる。荷重としてもってきたコンロを出し、湯を沸かす。それでコーヒーをいれる。とにかく水は多いので問題ない。冷えたビールを取り出す。涼亭にいる他の登山者ともシェアする。約1時間ほど過ごし、12時45分下山を始める。往路を下るかそれとももう一つのルートで下るか、決めていなかったが時間も早いので、別ルートで下山することにする。こちらは、往路と比べると整備状況や歩行されている程度は落ちるが、全体の平均勾配は小さい。
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竹林の向こうに1540峰 |
山頂近くは、結構下りが急だ。5分ほどで、阿冷山への縦走路を左に分ける。右にとり下る。竹林からは前方に1540峰が見える。13時5分、白毛林道への道が左に分岐する。右に稜線を登りはじめる。落ち葉が厚く敷かれた道を登る。背中の荷物が重い。13時20分、1540峰の直下を右に巻き、分岐に来る。左には白毛山西南峰へ続くと道標がある。また急坂が続く。幸いにボランティアによる補助ロープが危ないところに取り付けてある。13時52分、左に樹木が切れた場所で少し休憩する。
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白毛林道への分岐 |
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補助ロープの急坂を下る |
引き続き急坂を下る。二人の登山者が登ってきた。途中道に迷って時間がかかったそうだ。すでにこの時間、頂上までまだ1時間半はかかるだろう。数分下っていくと、坂が緩やかになり尾根を離れ、杉造林に入る。足元は杉の落ち葉が厚い。台湾も林業は採算があわなくなっているので、この周辺も伐採はないだろう。ちょっと日本の山の麓のような感じだ。しばらく緩やかな山腹道が続き、また急坂を下る。下りきると、大きな水槽が現れる。まもなく、産業道路に出る。道なり下ると、果樹園が現れ犬の吠え声とともに民家が見える。見上げれば、下りてきた山がすでに高い。更に下り、左に道をわけてまもなく、14時58分休憩を取る。
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杉林の中を下る |
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犬が吠える、背後に民家が現れた |
また坂道を下っていく。橋を越えて、上りが始まる。長い下りの後の登りは、すこしつらい。道端に廃棄さればスクーターがホコリをかぶって置き去りにされている。5分ほどの登り返しで、朝に通りすぎた分岐に来る。左へ、残りの道を駐車した車で歩く。15分ほどの下りで、15時30分に車のところまで戻ってきた。
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産業道路を下る |
休憩込みで行動時間約6時間40分である。約9.2km、登攀累計約920mだ。休憩はそこそこ取っているので、負荷を考えると結構よいペースである。勿論、高山は高度が更に1,500m高いわけで、空気も地上の数割になる。同じ環境で登れるわけでないが、今回の訓練山行でメンバー自身も、また連れて行く自分も自信を増すことが出来た。軽装で登れば、白毛山はルートは2、体力的もクラスである。もし、下山にこの山行と同じにもう一つの道を行くのであれば、ルートはクラス3である。