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2013-01-17

2013年1月16日 新店向天湖山 二つの顔をもつ山と山桜

成功路わきに咲く山桜
新店は、烏來と境界を分かつ。その境界線上にある向天湖山とその前後に連なる山々は、同じく新店区に属する獅仔頭山直潭山の山々に比べると、登山者の注目度が低い。獅仔頭山から空熊山へ連なる稜線から分岐し、加九嶺山を経て東北方向に尾根が伸びる。稜線の東側と西側では、性格がまったく異なる。西側は開け成功路に沿って集落や農地がある。一方東側は、紅河谷や南勢溪へ急峻な斜面が落ちるるので、ほとんど自然のままだ。成功路がすぐ下まで来ている向天湖山はそこそこ登られているが、それから先は登山者がグッと少ない。多くの登山者は、車やバイクで成功路の終点まで来て、そこから登るようだ。それ以外の登山路には、東側からの急坂道や尾根上の山道があるが、これもあまり歩かれていない。

獅仔頭山から見る向天湖山(中央のピーク、左の山塊は猴洞尖、2011/11)
今回は、東側からの山道を登り、稜線上の道を進んで向天湖山に登頂した。その後は、舗装された成功路を戻り、途中菜刀崙に立ち寄った後、廣興橋へ下った。もともとは、新烏路上の亀山から菜刀崙への山道を登るつもりであったが、結局登山口がわからなかった。そのため、下り道として考えていた、稜線から新烏路上の成功へ下る道を、予定とは逆方向で登り稜線へ上がった。亀山から菜刀崙への道は、殆ど歩かれていないのだろうか。地元の人が教えてくれた道も、結局途中で途切れてしまった。登山クラブの標識リボンも一つだけ道に落ちていただけで、他にはまったくなかった。成功からの道は、それよりましだが歩きやすい道ではない。成功路は、舗装された車道であるで気楽に歩いた。道わきや菜刀崙頂上には山桜が咲き始めており、春が近いことを告げていた。

下側の成功から登りはじめ、広興橋へ歩く、龜山の部分も含む
新店と烏來の間に伸びる山並みが今回の登山対象
7時過ぎに公館から849番バスに乗る。今日は平日なので車内はすいている。約50分の乗車で7時56分に亀山路バス停に着いた。過去二日間は、冬の台北に珍しい快晴の天気だ。今日も谷間から青空が見える。ネット上の情報に従い、新烏路三段を烏來方向に進み220巷で右に曲がる。突き当りから左に山腹を行く道を進む。ちょうど下水道の工事が行われている。しばらく進むと二階建ての宿舎がある。268巷18号の住宅と、その先の宿舎との間に道がある。これが登山道の入口のようだ。ただ、通常に見かける登山クラブの標識リボンなどまったくない。登り始めると、道が幾つか分かれる。一番歩かれているように見える道が左の山腹を行くので、これを登ると壁だけの廃屋が並んでいる。それが切れると、今度は山腹を登りはじめる。しかし、どうも山道らしくない。間違いかと思い、下って宿舎の入口に戻る。ちょうど地元の人が歩いてきたので、尋ねるとこの登山口で間違いないようだ。もう一度この道をとり、登ってみる。しかし、苗木の斜面を登り切ると道がなくなった。数十メートル登ったので、展望が開ける。亀山の集落の向こうに見える直潭山は、腰に纏わりつく霧が晴れかかっている。

亀山集落の上部から見る直潭山、山道はここから先なくなった
加九寮大橋と背後の向天湖山
あちこち探したが登山道が見つからないので、ここからの登山を諦め、もともとは下りに通るつもりの成功、加九寮の道から登ることに変更する。268巷を新烏路へ下りきると、童訓中心バス停がある。幸いにして849番バスは便数が多いので、ここから成功バス停までバスで移動する。数分待つとバスがやってきて乗車、9時15分に成功バス停に着いた。昨年11月に紅谷河古道から拔刀爾山に登った時もここからスターとした。南勢溪へ下る道の入口から、谷の対岸にこれから登る向天湖山の山並みが見える。陽のあたらない下り道は、少し寒さを感じる。下りきると最近塗り直された加九寮大橋の赤色が、ひときわ目を引く。橋を渡り道なりに進む。左に紅谷河古道入口を過ぎ、紅谷河を渡る。右の民家の犬が吠え立ててうるさい。登り返して進むと突き当りに、加興宮がある。舗装路が終わり、登山道が始まる。

加九寮大橋から見る南勢溪と背後の向天湖山の山並み、左から紅谷河が流れ込んでいる
舗装路の終点加興宮、廟の奥から山道が始まる
入口近くに標識リボンがある。亀山から菜刀崙への道と比べると、そこそこ歩かれている道のようだ。竹林の中を河沿いに進む。小沢を超えると山腹に取り付き、急坂が始まる。道はザレ石が多く、歩きにくい。細い補助ロープや、珍しい多色の布帯が設けられている。ボランティアが残したものだが、道の利用程度を示している。登山道入口から約40分ほどで、枝尾根上に道に取り付く。倒木が道を塞いでいるところが多い。木々の切れ目から尖ったピークが見える。高腰山だろう、その右奥は拔刀爾山だ。さらに十分ほど登ると、右側に檳榔の林が見える。竹林が現れると稜線はもうすぐだ。10時34分、稜線に出た。反対側は畑と墓地になっている。登ってきた自然のままの景色とは、全く異なる風景だ。谷の向こう側は、鹿鵠崙や平廣山が木々の向こうに見える。道は幅広の農道、右に行けば四寮山だ。

倒木が多い山道
木々の切れ間からのぞく高腰山と右奥の拔刀爾山
稜線にでたところから見る風景、農道と畑、墓地が広がる
草をかき分け進む尾根上の山道
道を左にとり、少し下がる。道はそのまま成功路115巷として下って行くが、立派なお墓のわきを左にまがり登っていく。この角度からだと、新店の街が見える。今日は、空気の透明度がそれほどでなく、南港山あたりまでは判別できるが、その先陽明山山系は霞のなかだ。右に森にはいっていく道がある。稜線上を進む山道だ。入るとすぐに標識リボンがかかっている。日が当たらないので、薄暗い。草深いが道幅は広い。進むと別の墓がある。広い道はここで終わり、細々とした山道になる。滑りやすい赤土の坂を草をかき分け登る。稜線の道は、あまり歩かれていないようだ。

苔の生えた大石の道
草深い道が突然ひらける。苗木が植えられて間もない、小さな茶畑のようだ。ピークを一つ越えた後、急坂を下ると、峠がある。右の道は成功路に下る、左は草深くあまり歩かれていないようだ。遠くに烏來の街が見える。直進して尾根道を登り返す。苔のはえた大石の道が続く。このあたりは、加九寮大橋から正面に見えていた稜線を歩いていることになる。道端に打ち捨てられた耕耘機が草に埋もれている。何故こんなところに捨てられたのか。草薮が現れる。青色のプラスチック製水甕が置かれている。右に良い道が続いている。これを取り進む。道は山腹をゆくが、稜線から離れていく。これは成功路へ下る道のようだ。はっきりしなかったが、先ほどはやはり分岐のようだ。5分ほど歩くと、成功路のヘアピンカーブ部分に出た。

成功路の終点、向天湖山の登山口
成功路は左に曲り、登っていく。5分ほどの登りで、成功路は民家の門で終点となる。民家の左脇に幅の広い山道が登っていく。向天湖山への登山道だ。道案内も幹に取り付けられている。バイクが一台置かれている。誰か登山に来たのだろうか。山桜が桃色の花をつけている。春も近いのだろう。道路反対側の木々の切れ目からは、真正面に直潭山がある。その右には石碇後山や翡翠水庫も見える。手前の山は、四寮山とその左は菜刀崙だ。時間は11時半、成功バス停から歩き始めて2時間半、ほとんど休みなしで来たので、ここで少し休憩する。

登山口付近から見る直潭山と右の石碇後山、右に翡翠水庫も見える。手前のピークは四寮山
向天湖山頂上の様子
山道を登り始める。赤土で滑り易いところもあるが幅も広く、今日の山道の中では程度が良い。杉林が現れ、鞍部に着く。ここで左側から稜線道と合流するが、こちらは草深い踏み跡だ。右に折れ向天湖山へ向かう。平らな道が終わると、山腹に取り付き急坂になる。補助ロープも現れる。急坂が終わると、尾根に取り付く。谷から吹き上げてくる風が冷たい。ここから木々の間に、谷底とその向こうにそびえる猴洞尖と鹿鵠崙が覗ける。その左にある右肩が切れている特徴あるピークは獅仔頭山だ。上のほうから声が聞こえて来る。果たして二人の登山者が下ってきた。登山口のバイクの持ち主だ。右が切り立った尾根道はすぐ終わり、民家わきの登山口から20分、11時54分に向天湖山頂上(標高678m)に到着した。頂上から加九嶺山へ続く下りの尾根道は、これまた草深い中に消えている。

下山途中で見る平廣山の大規模山崩れ
頂上は、山名を彫り込んだ基石がある。それほど広くなく周囲が樹木で覆われている。加九嶺山から伸びる山並みのちょうど中間位置で、高さも突出する向天湖山は、これら樹木がなければ非常によい展望台なのだが。ちょうど昼時なので、食事をとる。今日は、コーヒーとドーナツを持ってきた。風の当たらない頂上は、陽射しで温かい。くつろぎのひと時だ。汗で濡れたシャツなどを広げて乾かす。二十数分休んだ後、12時20分に来た道を下り始める。上りには気づかなったが、対岸の平廣山山腹は大きな山崩れ跡がある。壊れて折れ曲がった送電鉄塔が見える。そのそばには新しい鉄塔を建設中だ。下りは15分で登山口についた。先に下っていった二人の登山客は、ちょうどバイクで帰るところだ。筆者が成功から歩いてきたことを知ると、驚いていた。

羽玄宮
羽玄宮から見る台北方向の風景
ここからは、成功路をずっと南勢溪沿いの松林路へ下る。来るとき通過した尾根への山道入口を過ぎ、更に下ると羽玄宮に続く階段がある。成功路を離れて階段を下る。山桜や白梅の花が咲いている。山腹に建てられた羽玄宮からは、遠くに台北の街や菜刀崙へ連なる山並みが望める。羽玄宮から右に山腹を行く道を歩き、階段を下がってまた成功路に出る。ここも山桜の桃色の花が咲いている。陽当り状態で差があるようで、木によっては蕾もまだ多い。これから花見によい時期になる。概ね下りの成功路を行く。ほとんど車両の往来はない。天上宮へ下る道を分ける。その先には、朝稜線に出た場所から下ってくる成功路151巷の分岐を過ぎる。つづら折の道をくだると、左側が開ける。ここからは猴洞尖と鹿鵠崙から平廣山が谷を挟んで対面に大きくそびえる。猴洞尖の左奥には南獅仔頭山から竹坑山への稜線が高い。

山桜
燈籠花
紅粉撲花
成功路から見る鹿鵠崙(左)と平廣山
菜刀崙
冬の午後の陽を浴びながら、ほとんど車の通らない舗装路を歩くのは気楽で快適だ。変わっていく山の風景や、道端に咲くいろいろな花を楽しみながら行く。山桜や梅だけでなく、紅粉撲花や燈籠花などの珍しい花が、何気なく咲いている。右の四寮山はけっこう高い。菜刀崙が近づいてくると、平らだった成功路は登り始める。振り返ると向天湖山の三角ピークが目立つ。道が右に回り込み、聖恩宮への分岐を過ぎると登りの最高点に着く。時刻は13時40分、向天湖山登山口の成功路終点から約1時間の歩きだ。左に開けた場所の隅に、菜刀崙頂上への登山口がある。聖恩宮分岐の近くからついて来た犬二匹は、山道には入ってこない。

菜刀崙頂上、大きな反射板とその設備がある
幅広の良い道を登り、数分で菜刀崙頂上(標高448m)についた。広い頂上は、電波反射板やそれに付帯する設備がある。コンクリートで囲まれた花壇(?)も設けられている。ネット記事では良い展望がある、ということだがススキが高く茂り、それほどの展望もない。少し期待はずれだ。台北市街方向もあまり見えない。正面の直潭山がススキの上に見えるぐらいだ。陽当りのいい頂上の山桜は満開の木もある。果物などを食べ休憩する。

成功路の下り途中で見る直潭山、右奥は大粗坑山
廣興橋
10分ほどの休憩後、同じ道を下る。登山口の成功路を挟んだ反対側に踏み跡が入っていく。ここには標識リボンが枝に結び付けられている。亀山に下る道なのだろうか。道の状態がわからないので、今日は安全をとってこのまま成功路を下ることにする。標高数十メートルの廣興路口バス停まで約300数十メートルの下りだ。つづら折りの道が続く。ところどころから正面に直潭山が見える。下りにつれて、直潭山がだんだん高くなっていく。30数分の下りで松林路との分岐に着いた。途中であったバイクや自動車は数台だけだ。松林路を進み、温泉などの建物を通り過ぎアーチ橋の廣興橋を渡る。片側は歩道がある。途中には展望台がせり出すように造られている。上流側には、大桶山が南勢溪の奥に控えている。15時に廣興路口バス停に着いた。まもなく849番バスがやって来た。

廣興橋から上流方向を見る、奥の山は大桶山
今日の行程は、歩行距離15.1km、歩行時間6時間38分(休憩時間を含む)だ。登攀高度累計は1148mとなっている。この数字は、亀山で登山口を探した1時間を含んでいる。終わってみると、はじめから成功より歩きはじめた方がよかったと思う。もちろん登山道入口がわからず無駄な時間と労力を使ったということもあったが、ルートのとり方として、はじめに行程の最高点向天湖山に登りその後は楽な道、という組み方のほうが気分的にも楽だと思う。この山系にまた来る機会は少ないと思うが、次回チャンスがあれば亀山と菜刀崙との間の山道がどうなのか、探ってみたい。
高度プロファイル、2キロ前は亀山、その右は成功からの軌跡

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