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永安歩道北入口近くから見る翡翠ダムと茶畑、上がりつつある霧と山 |
新年を迎えてはじめての登山は、石碇からスタートだ。新北市石碇区はかなり広い面積をカバーしている。今回は石碇の南部にある、翡翠水庫(ダム)に面した場所だ。中国浙江省の西部には、小さな島が沢山浮かぶ人工湖千島湖がある。今回訪れた場所は、その風景を彷彿させるので、台北の千島湖と言われている。翡翠水庫は北勢溪をせき止めたダムで、台北の水甕である。今回訪問場所は、湖でも上流に近いほうで幅も比較的狭いところだ。周囲の山腹の多くは茶畑になっている。中腹を行くもともとの保甲路を整備して歩きやすくした、永安景観歩道が設けられている。この永安歩道から歩き始めた。保甲路とは日本統治時代にそれまでの踏跡的な道を幅を広げ整備した道を指す。
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翡翠水庫の北側にある永安歩道、付近の登山軌跡も表示(クリックで拡大) |
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先に南側の永安歩道を、その後柑腳坑から小格頭まで歩く |
今回の山行は、大学後輩が勤める会社にある登山クラブの企画に参加した。数キロの永安歩道だけなので、そのあとは一人で更にダムの上流側になる柑腳坑から、山の上を行く九号線北宜公路へと続く小金瓜寮保甲路を登り、北宜公路を台北方向に進んだ。永安歩道へ降りる塗潭道路を分岐する十三股を過ぎ、その先の風露嘴から北宜公路と並行して水庫側を走る稜線を雲海山を越え、小格頭へと歩いた。このあたりは、山の稜線近くを主要道路の北宜公路が行くのであまり山登りという感覚ではないが、雲海山は標高580mあり、山の規模としては決して小さいわけではない。したがって、ダム側から山頂に登るという捉え方では、立派な山登りだ。
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霧が晴れていく千島湖の景観 |
年が明けてから、寒波のせいで天候がすぐれない。今日は、午前中は雨が上がって、山の霧も薄れ山水画のような湖と山の風景を鑑賞できた。しかし、昼過ぎからまた雨が振り出し、次第に雨脚を強め、風露嘴から山道の林に入っても滴が木々の葉では抑えられず、下まで降ってくるようになった。稜線からは、右に二格山や筆架山方面が見えるはずだが、今日はすべて白い霧の中だった。雲海山から雲海小学校を通り過ぎ、小格頭バス停へ下った。
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翡翠水庫のパノラマ、名の通り翡翠色の水をたたえる |
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永安社区の入口、塗潭道路の分岐点 |
今日の出発は、比較的ゆっくりだ。8時半にMRT新店駅で、山岳クラブメンバーの車に便乗させてもらい、北宜公路を永安歩道へ向かう。碧潭を過ぎて右に烏來の
大桶山や
拔刀爾山などが姿を見せる。天気は大丈夫か。銀河洞への道を分け更に登ると、
昨年10月に登った雞心尖の尖ったツインピークが目立つ。左に
二格山産業道路を分ける栳寮までくると、あとはわずかだ。このあたりから、北宜公路は稜線のすぐ下を走る。永安社区の石碑が現れ、勝安寺の鉄製山門がある塗潭道路の分岐を右に曲がる。多くの遊楽客が道を歩いている。茶畑の中を下っていく。幸いなことに、霧が晴れ始めた。目の前に翡翠水庫の風景が広がり始める。水墨画のようだ。右側に千島湖徒歩道となっている、細い舗装が分岐する。車を止め、歩いてこの道を進む。今日は休日なので、大勢の遊楽客が歩いている。道を数分進むと開けた展望スポットに着いた。まだ霧が上がり始めたところなので、茶畑の下に広がる湖はまだ全景を見せない。対岸の山は、
昨年11月に歩いた芋圓尖やその背後に大桶山から続く稜線の峰々だろう。
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多くの行楽客が歩く永安景観歩道 |
やってきた道を戻り、車でさらに下る。八掛茶園近くに車をとめ、そこから塗潭道路を永安景観歩道北入口に向けて下る。10分ほど下り9時半に入口に着いた。出店も設けられ、まさに観光地だ。ここから湖越しに見える山は火炎山北峰からの尾根だろう。その右奥に三つピークがあるが、一番奥はどうやら
芋圓尖のようだ。この長さ数百メートルの景観歩道は、テレビなどでも報道されて一躍有名になったようで、大勢の人が歩いている。前半は、コンクリの歩きやすい道になっているが、途中から土の道となる。連日の雨で道はぬかっている。山に慣れていない歩行者も多いようで、難儀しているのか途中歩きが停まってしまう。途中三、四カ所の橋を過ぎ、20分ほどの歩きで歩道南入口に着いた。ここからは産業道路を歩き、車をとめた八掛茶園へ戻ることができる。先に左に取り、湖の岸辺まで下りて行く。途中廃棄された人家を過ぎる。鶏が放し飼いにされている。水辺は道がそのまま水の中に入っていくような感じだ。樹木が茂り、展望はきかない。水はけっこう透きとおっている。この水は我々が日常台北で使用している水だ。
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翡翠水庫の水辺 |
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永安歩道南入口、ここから左の舗装産業道路を歩く |
道をもどり、永安歩道南入口から産業道路を歩く。数分歩くと登り坂が始まる。ここも多くの行楽客が歩いている。舗装された道は途中、左に土の道を分ける。更に登り永安歩道南入口から20数分でこの産業道路の最高点を過ぎる。ここには塗潭崙への山道入口がある。少し下り八掛茶園の分岐につく。百姓公の石の祠が道端にある。登山クラブの参加者は、便乗されてもらった車のHさんたち二人以外に、もう一台の車でやってくるメンバー数名がいたが、到着時間が異なり、また南入口から歩いたようなので、結局出会うことはなかった。我々三人が塗潭崙登山道入口近くを歩いているころ、ちょうど塗潭崙へ登っていたようだ。10時37分に分岐近くに止めた車に戻る。約1時間10分で一周してきたことになる。
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塗潭道路の八掛茶園近くから見るパノラマ、正面は十三股山 |
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小金瓜寮歩道、枝沢にそって登る |
一緒に歩いた二人は、午後用事があるということで台北へ帰る。途中柑腳坑まで車で送ってもらう。護安宮への分岐で下車し分かれる。護安宮へ立ち寄ってみる。ここから十三股山へ行けるようだが、入口がわからない。手持ちの地図では、さらに北側にいったところから分岐するように描いてある。先の分岐に戻りさらに産業道路を進む。直潭巷一號の民家の脇を入ると、藍天隊の道標がある。行き先は小金瓜寮バス停である。十三股山ではないが、山道になるのでこれを取り登ることにする。道は、石の階段があり古道の趣がある。暫く行くと、沢が現れコンクリ製の橋で越える。枝沢を渡り登ると一面に茶畑が広がる。この道は、北宜公路まで続く山道であると同時に、この茶畑への農作業の道でもあるのだ。茶の花がさいている。茶の木の間を登ると、運搬用の簡易ロープウェイと作業小屋がある。ここで食事を取り、一休みする。時刻は11時24分、この山道を登り始めて約20分だ。
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茶の花が咲く茶畑 |
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茶畑と作業を終えて山を下る農夫 |
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山腹を行く小金瓜寮保甲道 |
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北宜公道に出た、バス停がすぐ脇にある |
休憩後、また茶畑の中なかの道を登る。道は赤土の泥道で歩きにくい。農作業を終えての帰途なのだろう、二人の農夫が下りてきた。滑りやすいから注意したほうがよいと、話してくれる。茶の木も古くなると植え替えをするのだろう。上の数段の畑は、茶の苗木が植え付けられた直後のようだ。標識リボンに従い茶畑を左に行くと、茶畑から離れ山腹の山道となる。ここで上から下りてきた、夫婦の登山客と行き違う。永安歩道は観光地然の賑わいだが、こちらは純朴な山道、まったく違う世界だ。山腹をゆくと、開けた場所にでた。ここも下側は茶畑だ。対面の尾根には舗装路が走っている。どうやら十三股山の下を行き、墓園に続く道のようだ。ここからそのまま行く道と、右に登っていく道が分岐する。左の道も小金瓜寮バス停へ続くようだが、草深くあまり歩かれていないようだ。右の道をとり林の中を登っていく。歩くに従い、北宜公路を走る車やバイクの音が大きくなる。12時7分にヒョッコリと北宜公路に出た。入口のわきは小金瓜寮バス停だ。
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北宜公路を歩く、正面の山は粗坑崙 |
ここからは、北宜公路を台北方面に向けて歩く。少し登り気味の道は、大きな音とともに大型バイクが走り抜けていく。霧雨が降り始めた。天気はどうやら下り坂だ。手前に見えている山は、粗坑崙の稜線だろう。公路を登って行くと、左に台北花園公墓の大きな赤い山門が現れる。その少し左先は、今朝車で通り過ぎた塗潭道路の入口だ。十三股のバス停を通り過ぎる。右に文山包種茶の店がある。雨脚が強くなってきた。どうやら本降りになりそうだ。12時半過ぎ、左の山留壁のすぐ脇に、登山口がある。脇には標識リボンが沢山かかっている。風露嘴への登山道だ。森の中に入ったので、雨は直接あたらないが、それでも滴が落ちてくる。雨具をリュックから取り出して着ける。
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風露嘴山 |
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茶畑の脇を行く、霧で風景は無し |
山道に入って間もなく、風露嘴山(標高550m)の標識が木に取り付けられている。しかし、山頂の感じではない。少し登って行くと、大きなステンレスタンクが山道に据え付けられている。茶畑が現れる。周囲は白い霧の中、何も見えない。天気が良ければ、二格山方向が見えるはずだ。下って行くと十字路になる。右は北宜公路に下りていく。小さなピークを幾つか越えていく。草が湿っているので、ズボンが濡れて足に纏わりつく。赤土の滑りやすい坂は慎重に下る。右側から車やバイクの音が時々聞こえる。山道を歩いて約30分、13時7分に雲海山(580m)に着いた。頂上は木々があるが、水庫側は少し開けている。晴れていればダムが見えるのだろうか。休むこと無く、そのまま通り過ぎ下ると、石畳の道に出た。表面は薄く苔が生え、更に雨で濡れているので、土の山道よりも滑りやすい。下って行くと、左に雲海国小のグランドが見えてきた。直進する道から左に階段を下り、グランドに下りる。雲海国小は山の小さな小学校だ。それでも二階建ての立派な校舎がある。校舎の方へ行き、軒下でしばし休むことにする。時刻は13時16分だ。
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霧の中の雲海小学校 |
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ズボンについた山ヒル |
帰路に乗る次の緑12番バスは、坪林発14時15分だ。坪林から小格頭まで二十数分かかるので、まだ1時間以上の時間がある。果物などを食べ、しばし休憩する。ズボンにヤマヒルが付いるのに気づいた。持っていた塩をふるかけると、ポロッと落ちた。幸い足の血は吸われていなかった。冬でも山ヒルはいるので、注意が必要だ。この小学校の名前は雲海だが、このように霧に包まれることが多いのだろう、実に名にあっている。休日の学校は生徒も先生もいないが、観光客なのか三、四人が校舎を回っている。校舎の隅に取り付けれれている当校の沿革説明板によると、大正九年(1920年)に石碇公学校小格頭分校として開校したそうだ。もう九十数年の歴史があることになる。日本統治時代の歴代校長の名前も記してある。
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小格頭で待つこと40分、やって来た緑12バス |
30分ほど軒下で雨宿りをした後、小格頭へ向けて下る。ここからは、歩きやすい道なので傘を取り出す。校門を過ぎると桜の木が植わっている。春には花見ができるだろう。車道は右に降りるが、コンクル製の山道は直進する。あずま屋の脇を通り、階段を下って行き、14時少し前にバス停に着いた。このバス停は小屋がないが、すぐ近くの民家の軒下で雨宿りができる。バスを待っていると、突然バーンと大きな音がした。振り向いてみると、対面の雑貨店の前にバイクが倒れライダーが道に横たわっている。滑って転倒したようだ。幸いに大きな怪我はなく、カウリングが壊れただけのようだ。そのうち、近くにある駐在所の警察官がやってきて、事故処理をしていた。じっとバスを待っていると、風が少しあるので寒さを感じる。今日は風を通さない雨具を持ってきて、正解だった。14時40分過ぎに、緑12番バスがやって来た。バスは満員だ。乗車約25分でMRT親店駅バスターミナルに到着した。
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高度プロファイル(一部軌跡が切れてジャンプしている) |
今日の行程は、少し変則的だ。先に1時間10分ほど歩いた後、車で移動しまた山道歩きをした。二ヶ所あわせた歩行距離は約11km、休憩を含む所要時間は約4時間20分だ。登攀高度累計は718mである。霧が晴れかかった山水の景色は、晴れ渡った景色とはことなり、水墨画のような趣で良いものだ。午後になって、雨がふりだしたのは残念だったが。冬の台北は雨が多く、午前中は天気がそこそこ良かったことに感謝すべきなのだろう。
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