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2022-11-15

2022年11月3日 苗栗千兩山 - 細道邦山 回遊型縦走

大安溪を挟んだ対岸の象鼻部落、右が千両山(南峰)、その左が細道邦山
今年の台北の秋は、雨が多い。いわゆる天高い秋の日は、それこそ五本の指で数えるぐらいしかない。以前に比べ台湾は夏の台風襲来が少なくなり、一方特に北部は秋に雨が多くなっている感じだ。世界的な気候変動の影響なのだろう。しばらく雨が続き、台北近くの山登りもままならない。雨中を歩くことはできるが、面白くない。台湾の中部以南は、それに比べると天気がよい。そこで今回は、今まで足を入れたことがほとんどない、大安溪流域の山を登ることにした。

反時計回りに回遊
雪山山脈に源を発する大安溪は、台中市と苗栗縣との県境を流れる。河口から遡ると、第一高速道路わきで目立つ火炎山を苗栗縣側に望む。さらに行くと河岸段丘が続き、今年の春に歩いた、樟之細路で通過した白布帆あたりから谷間が迫ってくる。今回の目的地千両山と細道邦山とは、谷が狭くなってしばらく河ぞい行った、苗栗縣象鼻部落の北側に聳える山である。白布帆から上流の流域は本来タイヤル族原住民のテリトリーである。象鼻は、日本時代に背後の地形が象の鼻に似ているので、名付けられた。本来のタイヤル族の名称では、マイブアン(グアバ=番石榴の意味)というそうだ。この地にやってきたときにグアバが多かったことから名づけられたということだ。

大安溪北岸上にある象鼻部落と千両山
千両という名前は、日本人には千両箱を連想させる。中国語での千両は、重量を現す単位の両(1両=約75g)を思い出させる。いずれにしても、変わった名前である。一方、細道邦山は今回登頂した山以外に、近くに同名の山峰がある。こちらはその側面が断崖で切れ落ちており、より知られている山である。我々の登った山はそれに比べると、その昔バナナ畑が山腹に開墾され、放棄されたあとは訪れる人も少ない、不人気山で我々は道探しに苦労した。

竹林中の千両山北峰山頂
ルートとしては、大安溪に落ちる千両山稜線の末端から登りはじめ、千両山南峰を越えてさらに稜線を進み、千両山北峰を訪れて中象道路の峠にある登山口におりた。時間がまだ早いので、対面にある細道邦山を訪れ、中象道路を下って駐車場所へと回遊した。

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大安溪沿いの140号線を行く。前方に鳶嘴山橫嶺山など
台北を6時半に、一台の自家用車5名で出発する。第一高速道路は、新竹付近で通勤の車が多く、速度が落ちたがその後はスムースに進み、8時少し前に三義インターチェンジを降りる。ガソリンスタンドに少し立ち寄り、140号線を大安溪沿いに進む。前方に雪山山脈西稜の末端になる鳶嘴山などが青空をバックに並ぶ。8時22分、左に卓蘭街中への道を分け、なおも大安溪沿いに行く。長く雨模様であった台北に比べ、この青空は別の世界の如くだ。さらに10分ほどで白布帆集落のはずれを通り、大安溪を渡って南岸の中47県道を行く。

ダムを見ると象鼻はすぐだ
大安溪を渡る、前面は千両山
中47県道は雪山坑溪を渡りさらに道沿いの部落を通り過ぎる。左にダムをみて間もなく8時48分、左に下って橋を渡って南岸の象鼻部落へ入る。まだ新しく立派な象鼻小学校の脇を行き、中象道路を少し登って右に曲がり、山腹沿いに進んで8時56分象鼻古道の入口に着く。

登山口
車を駐車し、9時8分登山口(標高735m)から歩き始める。入口の新しい階段やその後しばらくの石段は立派だが、そのうち草が目立ち始める。数分で森林觀護所の廃棄家屋が現れる。周囲は樹木だが、南方向は大安溪とその向こうに大克山が望める。ここは日本時代は、駐在所があったところで、今日象鼻古道と呼ばれる当時の警備道が通っていた。家屋はまだガラスも残っていて、それほど荒廃していない。家屋内には、古道や千両山歩道が整備された時の説明板がある。それによると、千両山の西山腹を行く古道を復旧させ、千両山歩道と合わせて回遊できるような構想があったようだ。残念ながら、その部分の古道は復旧せず、千両山歩道もメンテされずのままだ。

觀護所
大克山
ルート説明板
觀護所の台所
觀護所の後ろはそこそこ広い台地がある。おそらく駐在所の一部であった場所だろう。そこから千両山歩道が登っていく。まだ改修当時の階段板などが残っているものの、明らかに補修はされていない。道筋はまだはっきりしているほうだが、倒木も多くまた垂れ下がったつたなどが、行く手の邪魔をする。坂はかなりの勾配になり、高度を上げる。

木製階段があるが道は荒廃している
倒木が多く歩きにくい
ところどころロープのかかる急坂も合われる。日差しが森の中に差し込み、森の底に斑模様を投影する。尾根上はそこそこ風が吹き、流れる汗に心地よい。10時10分勾配が少し緩くなった場所(標高1065m)で休憩をとる。森の中だが、梢を通して高度が上がったことがわかる。

ロープの急坂
倒木が多い広葉樹林
梢を通して高度が上がったことがわかる
樟林地界石の千両山南峰
休憩後また登ること数分、少し平らな場所に石柱がある。近くの樹幹に千両山南峰1087mと記した札が付けてある。石柱は、角が取れているが、專賣局 大正十四年八月 樟林地界第二七號と刻まれている。当時の政府専売局によるクスノキ林の境界石である。まさにこのクスノキを巡って、日本統治時代に地元原住民との衝突とその後の管理政策が行われたわけだ。この石柱は、その歴史を代表している。

尾根上を進む
三角点のある地図上の千両山山頂
前方左に苔が生えた 2.4Kキロポスト
稜線上の道は、勾配が緩やかになる。広葉樹の森の底は落ち葉で、雨が降って濡れると踏み跡がわかりにくくなる。10時36分、三角点基石がある小ピークに着く。ここが地図上の千両山だろう。場所を示す表示はない。引き続き緩やかな登りの稜線を進む。10時47分、岩が露出した場所に、2K400 と記された杭が道端にある。半分苔で表面の色が変わっている。全長3.6Kmとされる千両山歩道のキロポストである。

倒木は相変わらず多い
急坂を登る
倒木は相変わらず多く、乗り越えたり脇を回ったりじゃまだ。勾配がそれほどないのが幸いだ。11時を少し回り、広葉樹がきれて竹林にすこし入る。また森に入り1K800のキロポストを見る。少し下って、また登り返す。すこし崩れた急坂を登り、11時17分比較的平らなスポットで休憩をとる。

古そうな石段
竹林を行く
1.2Kキロポスト
休憩後登りはじめてすぐに、石段が続く。これは歩道整備の際に造った石段か、それとも過去にここは隘勇線だったのか。石段が切れ、そのさき丸太を使った階段を登り切り、少し下って竹林に入る。11時38分、1K200キロポストが切り取られ枯れたトゲトゲの黃騰の脇にたっている。そのうち道は草の密生地帯に突入する。人が歩く幅で踏み跡が続いていのが幸いだ。これでも歩く登山者がいる様で、少し刈り取られているところもある。十数分くぐったり、草をかき分けたりして苦戦したあと、よい道になる。

苦労して前進
道標のあるコンクリ舗装道分岐
落ち葉に隠されたコンクリ道
この道はおそらく廃棄された農作地への作業道だろう。下っていき11時50分、コンクリ舗装された道に合流する。脇には古ぼけた道しるべもある。左にとり少し登っていく。左に中象道路へと続く道の分岐をみて、右に少し竹林を登る。11時56分、竹に四方を囲まれた千両山北峰(標高1300m)に着く。千両山の最高点だ。

千両山北峰山頂
廃棄バナナ畑の向こうに細道邦山の大絶壁が見える
竹林を下る
道を折り返して下り、分岐を右に下山を始める。木板を使った階段道は、倒れた竹が邪魔をする。12時8分、0K800キロポストを見て、尾根上を大きく下り始める。廃棄されたバナナ畑の遠くには、細道邦山の大絶壁が見える。さらに竹林を下り、12時14分風が吹き抜け気持ちの良い階段で食事休憩をとる(標高1220m)。

荒廃の進む道
植物に取り囲まれてしまっている
40分弱の休憩後、残りの道を中象道路峠の登山口へと下る。この部分も明らかにメンテはされずに荒廃が進んでいる。階段も成長する植物に取り囲まれてしまっている。13時9分、登山口(標高1120m)に着く。登山口わきの案内板は、すでに半壊しパネルが地面に置いてある。予算がつきたのか、ここでも述べている山腹を行く中象古道は実現していない。

中象道路峠の登山口
対面の細道邦山
水槽脇のここから取りつく
時間がまだ早いので、対面にある細道邦山へ登るかどうか思案する。この細道邦山は、先ほど廃棄バナナ畑でみた細道邦山とは別の山である。つまりは近所に二カ所同名の山があるわけだ。思案中に、その方向から夫婦登山者がやってきて、細道邦山へ登るのかと、聞いてくる。二人はちょうど頂上近くまで登っていったが、廃棄バナナ畑の上部で道を失い、そこら中に生えている咬人貓(葉っぱの周囲に痺れる毒をもつ草)に苦労して、登頂を諦めて下山してきたという。

一応踏み跡はある
急坂をよじ登る
13時15分、我々も覚悟を決めてチャレンジを始める。斜面一面に広がる柿畑の上部を行き、大きな3つの金属製タンクの脇から登り始める。この山は、千両山に比してさらに登山者が少ないようで、マーカーリボンが非常に少ない。踏み跡は、先ほどの二人が歩いたこともあって少しはよい。雑木林や竹林、または見捨てられたバナナの木の森の中の急な勾配を登っていく。かなり急で危なげな坂でも、補助ロープなどはない。

道なき道を進む
踏み跡が途切れた廃棄バナナ園
登ること約35分、先ほどの二人が言っていた廃棄バナナ畑の上部(標高1250m)に着く。確かに踏み跡がない。そして道を探そうとちょっと動くと咬人貓の葉で手や足がしびれる。岩の角にちょっとした人の踏み跡らしいものが見える。しかしその先は草や枝が絡んでいる。鎌を取り出して邪魔な枝や草を切り取って、進んでみる。果たして踏み跡らしいものが続いている。さきほどの二人は、これに気づかなかったのだろう。

登り途中で千両山が見える
山頂へ最後の登り
露出岩の脇をよじ登り、さらに高度を上げる。黃藤のトゲトゲの細い枝が衣服に引っ掛かる。しばらくしてちょっとしたピークを越える。しかしここは山頂ではない。地図では大きく右に曲がり一度下って登り返したところのようだ。そちらに向かって進む。14時7分、密生する樹木の中の小さな開けた場所に差し込んでくる陽光が石柱を照らしている。細道邦山山頂(標高1305m)だ。石柱は、午前中に見たと同じ專賣局の物で、こちらは樟林地界第二八號とある。つまりここもクスノキの森だった。

細道邦山山頂
樟林地界第二八號
山頂の北西側は、かろうじて展望ができる。遠くには洗水山の山系がある。そしてさらに西の方角に見える尖った峰々は神仙縱走の稜線か。稜線を越えたさらに西には多くの家屋ビルが見える。方角からすると苗栗の街だろう。小休憩後、往路を戻る。

山頂脇から北西方向の展望
鎌で切り開いた場所を下る
往路というが、登りと下りでは見える景色が違う。このような道なき道の場合は、簡単ではない。今日はマーカーリボンを持ってこなかったので、登りの際に残せなかったことを後悔する。登りのGPS軌跡を参考に、何回か錯誤をして、先ほどの廃棄バナナ畑に降りる。ここからは、割合と道筋ははっきりし、問題なく下り、15時10分に大型タンクわきに降り立つ。往復に約2時間ほどを要した。道さがしを余儀なくされた結果だ。

水槽脇に降りてほっとする
中象道路を下る
中象道路から南方向を見る、左の稜線は朝に登った千両山の稜線
中象道路10K
残りは、4㎞ほどの中象道路を下るだけだ。果樹園の間の舗装路を下っていく。邪魔な樹木がないので、大安溪の対岸の山々が望める。交通量はあまりない。果樹園が終ると森になり、16時20分分岐を左にとって、駐車場所へさらに1㎞弱の緩い登り道を行く。16時半、車の停めてある登山口に戻り、歩き終えた。距離9.6㎞、上昇下降800m、休憩を含んで7時間25分であった。コース定数は25だ。


中象小学校、背後に細道邦山
帰京する前に、車で大安溪に架かる象鼻吊橋の対岸上部にある涼亭に行き、ビールを開けしばし寛ぐ。帰りは混雑にも巻き込まれず、2時間半ほどで帰り着いた。






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我々を悩ました咬人貓
本来は地域振興のために造った登山道なのだろうが、その後のメンテを考えずに造るだけでは、その後荒廃してしまい無駄になる。税金などの公的財政で造るのであるからは、そうした計画のない登山道は、整備するべきではないだろう。千両山歩道は、それでも時々登山者が通るので踏み跡は大丈夫だ。一方、細道邦山はそれなりの準備をしていかないと、途中であきらめることになるか、道に迷う。すぐ下には集落もあるので、逆に油断してしまう恐れがある。



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