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頭份後花園(老崎)步道 |
台湾北部は、晩秋から東北季節風の影響で気温が下がり、またその冷気が温かい空気に触れて雨を降らすことが多い。今年も台北付近は11月からずっと天気が良くない日が多い。今月に入っても同様で、あまり晴れ間が訪れない。そんな中、ちょっと南下して苗栗縣の頭份から新竹縣の南部になる新城までの丘陵地帯を歩いた。ここまで南下すると、天気がよいことが多い。標高は最高点で180メートルと、高さはとるに足らないような高さだが、ハイキングとしては決してつまらないものではない。夏は暑くてとても歩くような気になれないが、気温が低い時期の台湾中部の丘陵地帯は、天気もそこそこで田舎の風情を楽しみながら歩くのも面白い。車道歩きでも、こうした場所は交通量もとても少なく、徒歩の速度だからこそ見聞できるものもある。
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老崎坪頂山 |
日本から訪れてわざわざこのような場所を歩くとは、あまり考えられないが、台湾にはこうした場所もある、ということで紹介する。実は、二、三年前に同じように田舎の道を歩く
樟之細路の歩きを経験した。その時も気温が低い時期に歩いた。こちらも丘陵地帯を行くルートであり、その意味では同様で、
今年年初もあまり起伏のない丘陵地帯を歩いている。こうしたルートの魅力は、おそらく日本の里山を行くのと同じような感覚ではないかと推測する。つまりは、現地のゆっくりとした生活感を感じて歩く、という体験である。
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南から北へ歩く |
台北駅を7時発、第15自強号特急で出発する。「自強」は、読んで字の如し。自分で強化するということだ。台湾の多くの国民の意思を無視し、虎視眈々と台湾を武力で併合しようとしている中共政権に対し、その暴挙を許さないという現状では、この言葉は今こそ大切な意義を持っている気がする。車内は、かなり満席だ。基本全席指定で、下車駅竹南駅まで220元(現レートで約1060円)である。乗車約1時間半、8時28分に定刻到着した。
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台北から南へ約100㎞ぐらいの地点 |
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頭份後花園(上斗)バス停で下車 |
竹南駅へは、今まで何度か訪れている。日本でもだいぶ認知度が高まった台積電TSMCをはじめとするハイテク産業の中心新竹の南で竹南である。新竹ハイテク産業のすそのがかなり広がり、この竹南も新しい住宅などが多く建てられてきている。竹南駅は東西二つの出口がある。今日は西口からでて、その駅前の通りから8時50分に発車する苗栗客運5805番バスに乗る。街中から線路下をくぐり駅東口に立ち寄る。バスは頭份の街を経由する。ここで朝のマーケットで買物をした人達が多く乗り込み、バスは満員になった。
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入口近くの案内図 |
バスは街中を離れ、9時22分に頭份後花園(上斗)バス停につく。このバス停は、観光地の南庄や
獅頭山へ向かう5805A台灣好行急行バスも停車する。近くには
以前立ち寄り食事をした店もある。下車した対面に頭份後花園と刻まれた石碑が据え置かれ、ここから入ることを示している。同行者がバス停わきのコンビニで用を済ませるのを待ち、9時半道を渡って歩き始める。
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川の向こうが後花園の台地 |
頭份後花園とは、頭份市街の東北に位置する高台に設けられた歩道や休憩所などを含むリクリエーション場所である。ここには本来老崎古道と呼ばれる昔から住民が通った山道があり、それを中心に整備発展させたものである。後花園というと、花壇などがあるようなイメージである。確かに花は咲くところもあるが、丘の上のため水利がよくなく農業開発されてきていなかった場所を利用した、自然保全地区といったところで、花とは直接関係ない。
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クスノキ加工工場 |
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石段坂道を上る |
民家の間を過ぎ、小川を渡って少し登ると左に、後花園歩道と名された道の入口がある。入口のすぐわきにはクスノキの加工場のようで、クスノキの香りがする。ここから丘の上へと階段道が続く。途中山門をくぐって大道寺への道を分け、約10分で慈母亭涼亭のある台地の端部に上がる。視界が開けるが、今日はぼんやりして遠くはかすんでいる。透明度が高ければ
五指山,
鵝公髻山、
神桌山,
加里山,
鹿場大山(樂山)などが見えるようだが、すべて霞のなかだ。上記の山々はすべて登っているので、ちょっと残念だ。
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遠くはかすんで案内の山々は見えない |
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廃棄トーチカ |
石畳道が終わり土の道になると楓林が広がる。林の間の道を進んでいくと、中華民国国旗がつけられた廃棄トーチカ、そしてそのすぐ近くに廃棄手榴弾訓練所がある。台湾は国民皆兵制なので、同行の仲間は手榴弾訓練などを受けている。当時の訓練の様子を見せてくれた。歩道へ戻り、また石畳道を行く。空は雲が多く、大地の上は風が吹き抜け、少し寒い。ただ、雲間から陽光が差し込むようになった。
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手榴弾の使用解説壁 |
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楓樹林 |
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伯公祠 |
数分歩くと、道脇に伯公祠がある。伯公とは客家人の土地公である。参拝されている祠は、きれいに保たれている。そのすぐ上に東望涼亭がある。10時24分、歩き始めて約1時間、小休をとる。涼亭のすぐわきに伯公山(標高150m)の基石がある。道は少し下りはじめ、左に大きな開発中の住宅を見る。5分ほどで楓林吊橋に来る。吊橋は道路をまたぐ橋で、この後花園の中のアトラクションの一つだ。
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東望涼亭、このすぐわきに伯公山の基準石 |
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楓林吊橋 |
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右側タンクのすぐわきに老崎坪頂山三角点 |
10時46分、休憩所に来る。そのすぐわきに三角点がある。ここが今日の最高峰 老崎坪頂山(181m)である。道はしばらく下り、鞍部に降りる。道しるべには、許家古厝、 181.9高地と記されている。後者は、今過ぎた老崎坪頂山よりちょっと高いということを示すために、あえて小数点までつけて表示しているのか。歩道を進む前に許家古厝を訪れることにする。
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"181.9"高地の道しるべ |
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許家古厝 |
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ススキの箒 |
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西方涼台 |
雑木林の間の舗装路を下り、茶畑などがでてくると許家古厝があった。住人が暮らす家なので外からだけの見学である。大きな三合院つくりの伝統的家屋である。現代では少なくなっている。ススキの穂を束ねた箒が並べてある。歩道に戻り、181.9高地へと登り返す。テーブル椅子が置かれた広場は西方涼台というようだ。日差しが強くなり、ずっと歩いてきたこともあり、体が温まったので外套を脱いで調整する。
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最後の分岐、右にとって桟道展望台へ行く |
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聖稜線の説明板 |
桂竹林の間を下り、分岐で右に展望台方向へと往復する。末端にある桟道も透明度が高ければ遠くの山々が見えるはずだが、ちょっと残念だ。分岐にある説明板には、なんと
聖稜線!の説明まである。風がなければ、よい休憩所だがそのまま分岐へ戻り、さらに下って11時35分、全長2㎞の歩道出口についた。
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桟道展望台 |
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後花園歩道の終点 |
ここからの道のりは、大部分が舗装路歩きである。普通は舗装路と聞けばうんざりするが、ほとんど車のこない舗装路歩きは、そのほとんどが丘の上や畑のわきをいき、いわゆる里山的な地形を行く。農閑期の水田には小さな花が一面に広がり、それはそれで風情を呈している。天気が良いときに、こうした道を歩くのは、徒歩のスピードだからこそ鑑賞できるものが多い。
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舗装路を行く |
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この土地公祠で昼食休憩 |
このあたりの地形は、高い山はないが、それでも谷や丘が連続する。道は当然下りまた登るということになる。途中下って左に土地公の祠があるので、11時43分に立ち寄る。本来はもう少し大きく、ほかでもあるような屋根や椅子机が置かれた場所を期待していた。ところが、行ってみると改装された新しい祠は、その脇に屋根のある場所があるが、机いすなどはなくまた丘の中腹でその手前がまばらな果樹園なので、風がそこそこある。いずれにしてもここで昼食をとった。
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黄色の小花が畑を埋める |
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萬高坑山登山口(右の枯草部分) |
25分ぐらいの昼食休憩後、また舗装路歩きをする。植物に詳しい仲間から、道わきの草花について説明を聞く。こうしたことも、里山歩きの発見であり楽しみである。地図を見て下ってまた登り返し、萬高坑山の登山口にくる。登山口といっても枯ススキが道を埋める山道は、注意しないとわからない。草をかき分け倒木の枝を乗り越えて進み、最後に急な登りにくい斜面を登って、登山口から10分ほど、12時50分三角点のある山頂(標高106m)につく。訪れる登山者は少ないが、小さな山名プレートが残されている。
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草をかき分け進む |
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倒木の枝を踏んで進む |
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萬高坑山山頂 |
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往路を下る |
往路を下り、また舗装路を進む。下って右に台湾高速鉄道の線路が並行する。ちょうど列車がやってきた。車上から車外を見るとあまり高速感を感じないが、外からその通り過ぎるのを見ると、さすがに速い。あっという間、という表現が口をつく。道はさらに下り、小さな集落を過ぎてまた登り返す。その先、交通量がちょっと多い幹線道路にでて登り返し、その最上部から左に少し入る。そして、そこから南山山頂(標高58m)を往復する。
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高速鉄道列車がつむじ風のように過ぎる |
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紫色の小花で埋まる畑 |
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南山山頂 |
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橋の向こうが新城の街 |
ゴールの新城は、もうすぐだ。下って橋を渡り、14時過ぎ街中に入る。街中といっても店はあまりない。バス停前は漢方薬店である。バスについて尋ねると、店主が出てきて教えてくれる。次のバスまでまだ50分ほどある。そのうち店主が豆乳をごちそうしてくれる。仲間は店に入り漢方薬材が良い値段で販売しているので、数名は料理に使うような薬材をたくさん購入した。昔ながらの漢方薬のお店で、その匂いや内部の配置などは、筆者がその昔台湾に来た頃の台北の漢方薬店を思いだした。
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漢方薬店 |
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昔ながらの店内 |
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薬材を測る店主 |
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バス内部 |
そうこうしているうちに5603番バスがやってきた。バスは、一般の都市型バスでなく観光バスである。もちろん料金箱や停車案内板などもついている。予定時刻より少し早く14時50分に発車、1時間ほどで新竹駅前に到着した。帰りの汽車は、自強号などの特急は満席、15時44分発の区間各駅停車で帰京した。乗車券は距離が短いこと、また各駅停車であることで、往路の約半分114元である。バス代も合計で60元、台湾の公共交通料金は日本に比べると格段に安く、山登りにとってはとても助かる。
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日本時代からの新竹駅舎 |
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道脇に咲く黃金蒲桃、割と珍しい花とのことだ |
今回のルートは、
蕭郎獨步山林間という台湾の低山を多く歩いている登山者の記録をもとに、その逆方向で歩いた。このような山は、ほとんど知られていない場所であり、情報は多くない。距離約11㎞、活動時間約4時間半である。丘歩きであるが、上り下りが想定よりあり、累計で340mほど登っている。コース定数は15である。
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